TA分散エスキス

今回のTA分散エスキスでは富永さんの紹介で明治大学大学院建築学科の中川沙織さんが参加してくれました。

今回はデジタル系(川島、浜田)、シミュレーション系(高瀬、茅野)、意匠系(中島、富永)、ぶっとび系(中川あや、中川沙織)に分かれてエスキスを行っていきました。
ちなみに筆者も、半分はネーミングの意味がわかりません。


では本日行われたエスキスの内容についてまとめていきたいと思います。

児玉君
選定した敷地に現存するプログラムを踏襲し、新たに緩やかにスラブでつながれた空間をつくりそのプログラムを再配置していく。その空間は無電化冷蔵庫の原理で冷やされ周辺よりも涼しい横町のような場所になる。解析では内部発熱を水に吸熱させ、水の対流をおこし、熱を屋根付近に移動させることで、屋根パネルからの放射により宇宙に放熱することを示そうとしたができなかった。




設計の案としてはかなりよくなった。北千住の夜を愛せという前回のエスキスが効果覿面であった。その敷地だけではなく敷地脇の道に対しても快適な環境が提供できれば、道の両脇の居酒屋の椅子やテーブルが店の外にまではみ出してきて新しい顔の道ができるのではないか。シミュレーションに関しては、内部発熱が水にうまく伝わっていないのと、水の熱容量が大きすぎているため、またおそらくメッシュが荒すぎたため水の対流が起きなかったとおもわれるので、4層分をまたぐ冷却水の対流を考えるのではなく最下層の水の部分で対流がおきるかメッシュを細かく切り検証してみること。


王さん
黄砂を吸い込むモデル形状に対し、風を流すシミュレーションだけではなく、汚染物質を流すシミュレーションを行った。
シミュレーション結果として南側の入り口を開けておくと室内に汚染物質が吹き込み蓄積するという結果になっていた。解析領域の設定が誤っており東西の黄砂のたまり方がうまく再現できていなかった。北側の斜面にはHPシェルにより構成されるうろこのような外皮を提案し、シミュレーションをしようとしたがモデリングができなかった。



南側入り口を閉鎖し、解析領域もモデルに対して十分大きくとり解析すると、汚染物質が北側のくぼみにたまり込む一方、風は南から北へと抜ける浄化作用がちゃんと示せた。
北側の斜面に対してはHOシェルのより構成される屋根全体をモデリングするのではなく、HPシェル1ユニットだけモデリングし解析にかけるようにした方が良い。コンクリのなだらかな屋根の上にうろこがささっているような屋根で妥協するのはまだ早い。HPシェルだけで構築される屋根の可能性をシミュレーションしてみること。


田中さん
堤防付近の敷地を建物抜きでモデリングし、そこに流れる風をシミュレーションしたが、顕著な特徴は現れず、結果の見方がわからない状態だった。
プログラムとしては中間までは堤防そのものの建築化であったが、今は堤防自体には手を加えず、堤防付近の開発という方針に切り替えている。



シミュレーションにかける以前に、スタディ模型を作り、堤防付近のボリュームによる風の操作を考える。まずは手を動かす。
風の解析をするときは風向を表すベクトルのひとつの動きを追い風が堤防沿いに流れるのか、堤防を越えて吹くのかをスタディする。現状ではまだ一方向からしか流していないので、全方向から流し、堤防がその敷地に対してどの程度影響を与えているのかを定性的に把握する。シミュレーションと並行してプログラムや建築の役割について具体的に考える。



藤間君
前回のエスキスを受け、無意識を意識的に解くためにノマドにとって必要と思われる行為に対し最適な温度、湿度およびその行為の継続時間を自分なりに分類した。意識的につくる温度むらに対しこれらの行為をあてはめていく。建築の鉛直方向にも大きな温度むらをつくり煙突効果により周辺敷地の排熱を回収することも考えている。


スラブに通しているシャフトの径が20cmなのに対し、メッシュが大きすぎる。細かいメッシュを切るにはビル全体のモデルではメッシュ数が大きくなりすぎるので、シャフト1本レベルでどの程度シャフトから発生する熱が広がるかを見た方が良い。排熱を回収数という話に対しては、ビルの排熱の場合室外機の位置的に排熱が主に屋上から発生するため、その熱を吸い込み排出するためには、相当な超高層を考えなくてはならない。


米澤君
Flow designerのシミュレーションをもとに、球の大きさをスタディ。大きすぎると空気の流れが十分におこらず、温度ムラができない。半径250mが現状ではよさそう。非常時のシェルターとして考えている。非常時は閉じた系として機能し、通常時は開いた系として機能する。


ストーリーが定まっておらず、特に通常時、日常での使い方が提案できていない。ただ、ストーリーのみで構築すると、今まであったノアの方舟的な案に陥ってしまう。環境要素からのボトムアップで全体像が問われないくらいのものをつくる方向性もあるのかもしれない。フラーに対する自分なりの解釈は必要である。

石綿さん
負圧を生み出す塔状のヴォリュームを下水処理場の敷地に建てて、臭気が拡散しないようにするという案と、下水処理場の機能と対応させたパッチワークのようにテクスチャを構成するという2案を考えている。



提案された2案は両立するので、テクスチャをまずやって、そのテクスチャの延長として塔が建つようなものができてもいいのではないか。そのために塔の形のシミュレーションスタディ、敷地の日影図(GLだけでなく、+3000ごととかの)が必要。その素地を整えたうえで、非空調空間という課題にこたえるかを考えていけばよい。

建築の空間はどうなるのか。塔にまとわりつくのか、大きな屋根がかかるのか、地面の人工地盤に起伏をつけたりしながら変化をもたせるのか。プログラムは現在計画中のオフィスとすれば自然かもしれないが、塔が構造体以上のものになりうるか。
○木曜までの課題
・敷地の風・日射シミュレーション
・塔の配置のスタディ
・プログラムはどうするか


吉富君
敷地の読み込み、既存の図面をおこして、スタディしようとしている。シミュレーションは現状なかなかうまくいっていない。緑のひさしと塔の具体的な形を考え中。

敷地模型をすぐにつくり、断面を5枚くらい書いて、生活の様子や、提案の具体的なカタチを構想するとよいのではないか。シミュレーションは適宜TAに聞いてくれればと思う。

紺野さん
成城において、駅ビルのプログラムを分析し、1つ1つのプログラムの非空調空間化できる部分を抽出し、GL付近の道なりの風と、上階の高さおける卓越風を手掛かりに空調空間のヴォリュームの配置を変えることで、非空調空間に風がいきわたるようにしつつ、居場所をつくる。さらに周囲にも展開することで、駅ビルだけで完結しない周辺地域にもよいものを目指す。

居場所というときに、具体的な対象、時間帯、季節などのシーンを考えればいいのではないか。駅ビルという不特定多数の人がいるプログラムであるからこそ、いろんな場所をつくる意義がある。雨水の通り道のようなものをつくってあげてもいい。ヴォリューム配置のスタディだけではなく、スラブに起伏やレベル差があったりして、建築としてどこを変えればよいか、変えうるかを考えた方がよい。

松田君
基本的には今までの案を引き継ぐ。ガラス張りの超高層へのアンチテーゼとして、シロアリの塚の転用。どうやって建築に落とし込むかというところで素材について調べてみると、石灰華やビオライトなどがあった。新築でなく、リノベーションでも良いのではないかと思っている。


リノベーションの方が色々なケーススタディもでき、リアリティを持たせやすいかも。必ずしも全てを覆う必要はなく、ビルの1部分だけとかもあっても良いのでは。パトリックプランのようなもの。方法論的な提案になるのではないか。運河沿いなどにすると良いパースが描けそう。
○木曜までの課題
・ストーリー・ビジョンの組み立て
・壁における操作のスタディ
・(コンセプト)模型
・現状の品川においての風・日射シミュレーション

清野君
基本的には今までの案を引き継ぐ。内外部を過度に仕切っているペリメータゾーンへのアンチテーゼとして、運河と建築の内部空間の間の浸透膜のようなものを考える。スキンの素材を何にするのか考えている。同じ素材1枚を重ねていくのか、違った素材を組み合わせるか。前者の方がシンプル?外形のイメージがない。


スキンを重ねることで違う空間を利用できると良い。敷地の選び方は良く、駅から川への眺めから外形を考えてみては。その際、駅から川まで外部にしておくことはなく、膜をうまく利用する。こわす・なくすだけが否定の仕方でないので、違ったアンチテーゼを。
○木曜までの課題
・外形スタディ
・膜の種類・効果の詳細な検討
・敷地模型

林君
基本的には今までの案を引き継ぐ。地下鉄と外部を結ぶものとして、ヤオトンのようなものを展開させていく。ヤオトンの歴史を調べていくと、今までの進化がわかった。環境的な長所・短所も論文からわかってきた。これらを参考にして、もっと環境という視点をつなげながら地下鉄の空間を展開させていく。

色々なヒントがわかってきたが、全体のイメージがつかめない。ざっとこんな感じという配置図やゾーニングを書いてみて、敷地に当てはめていこうとするとイメージが湧きやすいのではないか。また、変数をどこにするか当たりをつけどんどんスタディしていってほしい。
○木曜までの課題
・建築の配置図のイメージ・大まかなゾーニング
動線スタディ
・ヤオトンに環境を組み込んだデザインのスタディ

小原君
敷地は北京。太陽のエネルギーを建築の壁面と外部空間にどう分配するかを再考したい。太陽光線を全面に受けとめるボリューム「屋外充実型」となるべく避けるボリューム「室内充実型」を考案した。現状は屋外充実型のボリュームには動線、室内充実型のボリュームにはプログラムが入ることを想定していて、それらが組み合わさることにより日射の分配が考え抜かれたビルが出来上がる。


細長いボリューム組合せ方の造形スタディとしては良くなってきたが、もっとロジックが欲しい。そこではビル全体を機能させる点と日射の分配が意図した通りになるという点が重要になってくる。またボリュームの内部の使われ方のスタディが足りないので、そこのバリエーションを出し、新たな生活像を作ることができれば良い。クロードバラットの「斜めに伸びる都市」は、居住と動線の分離へのアンチ的な内容だから、参考になるかもしれない。しかし、全体的に机上の空論でしか案が構成されておらず、敷地や温熱環境などのリサーチも反映されていないため、実際の社会に対する提案性が低いので、なぜこの建築を作らなければいけないのかという理由を考え抜いて欲しい。

四次元的。全ての日時について最適化はできない。話が複雑。これだけ時間を考えているから、それに伴うアクティビティもしっかり考えたい。とにかく、大事に考えているスタディをしてみて、それらを組み立てるというイメージ。
○木曜までの課題
・コンセプトをA3 1枚で
・部分のスタディをもっと膨らませる
動線スタディ
・一人一人のアクティビティを語る

富山君
北京における中規模ビルの建物の在り方を再考する。古来より四合院の中庭の環境を中心に幅広い所得層や背景の人々を受け入れる器として働いていた。その四合院の形式を8層程度のビルで立体的に展開することにより、ビルの外部にムラのある外部環境を作り出す。それによって現代の北京においても様々な所得層の人が集えるような場所ができるのではないか?

四合院の歴史や形式をしっかり調べてそこからボトムアップした思想と空間造形を提案できているのは良いが、肝心の非空調域の設計まで至っていないのが欠点。また、現状の模型では構造体を殆ど表現していないため、今後構造体や、ビルのファサードができてきた時に一気につまらない案にならないか心配である。環境と意匠両方の面で早急なスタディが求められる。環境的なシミュレーションで徹底的に検証することによって、ビルのファサードや構造体まで規定していく方向性が突破口か。

北潟君
敷地は品川の街全体だが、集中設計敷地は食肉工場。食肉工場の建物を分解し街に再分配するという案は、街に与える影響や食肉工場の機能性を鑑みてボツになった。現食肉工場の核となる部分は残しながら、塀を取りはらい周りから動線を挿入することによって、食肉工場を品川の新たな交通のハブとして機能させる。食肉工場へとつながる動線は、同時に街の環境を微妙に操作する装置としても働き、街の各部の環境的なポテンシャルを生かし、問題を解決しながら、品川という都市の分断を解消する。



計画・環境の両面において品川の街におけるミクロなリサーチを丹念に積み重ね、参考となる文献を活用しながら案を作ろうという姿勢が良い。しかし建築として形にできていないので、早急なスタディが求められる。また、自分が街の中に動線を挿入することによって何が起こるかについての環境的なイメージが皆無なので説得力を持ったストーリー作りが求められる。

分散させたいとのことだが、機能的に無理があるのではないか。食肉市場の中を見学してみて現実のものをしっかり見てみる。オープンスペースを作りたいというだけでなく、どうつなぐかのネットワークまで考えられると良い。食肉工場の場所性に注目しているが、食肉工場自体と人との関わりは?
○木曜までの課題
・意志を固めてくる
・既存の状態と壁を省いた状態の風のシミュレーション
・既存の状態の模型
・周囲の状況、そこをどうしたいのかを細かく書き込む




次回は乾先生によるレクチャーとエスキスが待っています。
外部の方でもお気軽にレクチャーにお越しください。

華僑を迎えてきましたが、引き続き頑張っていきましょう!