BIAD(北京市建築設計研究院)訪問

北京に到着後、早速BIADという事務所の訪問をしました。

日建の川島さんの紹介で訪問することになったのですが、
BAIDは日建設計や磯崎アトリエなどとも協同でプロジェクトをやっているとのことです。

3000人弱の人が働いているとのことで、かなり大規模な組織設計事務所です。

設計室主任のLiuさんにプロジェクトの紹介をしてもらいました。

CBD CENTRAL PARK北京市

CCTVなどがあるCBDと呼ばれる地域開発のマスタープランを行った。
北京では故宮を中心として正方形の環状にインフラ整備されており、
CBDは故宮の東側に位置する地域である。
北京の道路の特徴である主十字路・副十字路という関係、緑地帯、地下鉄網が開発のキーとなっている。
地上270万m2,地下140万m2の敷地に、18棟の超高層が建つ地域での開発のルール作りを行った。
日本と違い、中国は土地が国有であるために、開発を行う事業者が好きなように地上げを行って意図したような計画を実施することができない。

そのために、当初の段階から、都市計画・動線の計画を周到にしておかないといけないとのことでした。
中国では公共のプロジェクトの中で、どう下地を作るかが大事とのことです。


フェニックスTV

50mの高さ制限がある敷地なので、形状で工夫を行った。
メビウスの輪をモチーフにした形態をとることで、スタジオが入る平らで低層なボリュームと、オフィスが入る高く縦長なボリュームが連続的につながるように構成されている。
そのボリューム間の屋外空間は、公開空地となっており隣の自然が豊かな公園へとつながる。

RCのボリューム、steelのファサードは、すべてBIMによるスタディで形状を決定しており、そのまま部材の形状を起こして施工しているとのことです。
CFDによる外部風の検討、日射遮蔽が可能なファサードなど検討を行っていたようです。
また、日本人建築家の迫慶一郎さんと共同でやっているとのことでした。


次に、グリーンビル部門の部長のJiaoさんに環境的に配慮した建築の事例を紹介してもらいました。

中国では1980年ごろから環境建築という類の言葉がいわれるようになったとのことです。
1人あたりではアメリカの1/10程度の消費エネルギーではあるものの、
人口が膨大なため1990年代から環境について政府からもいろいろと取り組みがなされるようになっているみたいです。
そこがから委員会が作られるなどして、中国の環境建築の評価指標が策定されたという経緯があります。

中国のここ2〜3年の動きとして、Jiaoさんは次のように考えているということでした。

・今でも建築家は、環境について全く何も考えてはいないで好き勝手に建てている。
・100年前のほうが自然に従った建築を皆が建てていた。
・都市を知らないと環境建築はつくれないのでは?

ひととおり環境建築についての考えを伺った後、プロジェクトの紹介をしていただきました。

学校のプロジェクト

政府の偉い人たちのほうが、設計者より熱心に環境について考えている点が指摘され、
それに合わせて設計者は義務的に環境技術を扱っていたり、政府が定めた環境建築の評価手法(アメリカのLEEDや日本のCASBEEのようなもの)を使用しているとのことです。

吐魯番新区の開発

PVを建物の屋根にとことん載せて、電力自給率130%(!)を目指すというものでした。実現可能なのでしょうか・・・。余剰電力が生じた際には、電気バスを運転したいということでした。
中国では、買電は0.5元/kWhなのですが、余剰電力の売電により1元/kWhの補助金が出るという内容のようです。ただし、実現するには、建築的・エネルギー的な問題だけではなく、政治的な課題もあるとのこと。。。

低能耗建築プロジェクト

Jiaoさんの肝いりのプロジェクトとのことで、自分がやりたい環境建築を実現するべく建築家の設計をどうやって環境建築にするかを考えた。85%エネルギー削減を目標とし、お仕着せではなく、土地や建物に合った技術をつかうことを考えた。
ECOTECTで光シミュレーション、CFDソフト(ANSYS)でボリュームを小さく、北からの季節風を防ぐ、北側にメインのプログラムを設けないなどのスタディを行った。緑・植物を建物にたくさん生やそうと思った。東京に行った際には、建物に緑が載っており、人々は自転車に乗るようになったことを感じ、「日本人は皆できているんだから、中国もこうでなければならない」と帰国してから皆に言うようになった。


・・・中国では、経済成長にともなって、建築についても新しい省エネルギーに関する法案ができるようです。
中国人から見たら、日本は企業が主導になって環境技術に積極的に取り組んでいる印象があるようです。今が中国の建築家にとって、環境も考えないといけないという変わり目になるのではという見解でした。また、LEEDなどの評価が必ずしも環境建築を正当に評価しているかわからない側面があり、新しい評価基準を考えなければならないともおっしゃっていました。Jiaoさんは環境建築の評価をすること自体が大事ではなく、設計側全体としてどう環境に取り組むかが大事だと考えているようです。

また、その後のディスカッションでは、高瀬からBIADでのエンジニアリングと設計者の関係について質問をしました。
重要なプロジェクトでは必ず何らかのシミュレーションをやっているようです。
設計者がいくつか案を出して、それをもとにしてシミュレーションをして、その結果を見てデザインを決定するというプロセスがとられているようです。

さらに、北京での設計のコツ・注意点を伺ったところ、
北京では南向き開口で冬には日射を取り込みつつ、夏は通風の確保・日射遮蔽を行うという、日本とあまり変わらない手法がとられるようです。

具体的には、四合院では、集中したボリュームをつくり、壁と窓の面積を考慮し熱が逃げる窓をなるべく小さくとる、北に窓を作らないなどの工夫がされているということも教えていただきました。

中川純さんからは、昔の建築家はすべてのことを統合して設計を考えていたが、現代では考えなければならないことが多様化している。ここで、建築設計の組織体制が変わる必要があるのではないかといったことを、BIADの方々に質問をされました。

これについては、「建築家は環境のみで設計を行っているわけではない」、「エンジニアリングまでは建築家のやることではない」といったことがBIADの方々から議論されました。日本でも常々考えている問題を近くのアジアの国とはいえ海外の設計者と意見を交わすことができて、とても有意義でした。また、自分のスタンスを再確認できた気がします。