コンセプトドローイングエスキス+FlowDesigner講習会

5/3の前スタジオは各自の設計案のイメージを提示してもらったコンセプトドローイングのエスキスと今後主なシミュレーションツールとして使っていってもらうFlowDesignerの講習会を行いました。

・FlowDesigner講習会
今回の講習会では「風」と「日射」の解析シミュレーションを行いました。
みなさんほとんどがCFD初心者ということもあり、真剣な眼差しで取り組んでいました。


・コンセプトドローイング

パネルやスケッチ、写真など様々な形で受講生各位自分のコンセプトを提示してくれました。
前から考えていた人は除き、実質2日程度で考えた案の人が多いとおもうので、問題だけが見えている人、建築の形まで見えている人など進捗具合は人それぞれでした。
以下に各自のコンセプトや敷地の選定、および本日エスキスに来てくださった中川純様(+高瀬さん)のコメントを載せました。
(箇条書きのように一部なっていますが、申し訳ございません。また一部の受講生のコンセプトドローイングをスキャンし損ねてしまいすべてのドローイングを掲載できていないことをお詫び申し上げます。今後改めて載せさせていただきます。)

西倉君
ある企業がつなぐ4つの場所
・コンセプト
大きい建物により単純なボリュームから作り出される影ではなく、ガラスや線の操作により周辺に及ぼす影や温熱環境を多様なものにする。
敷地のスケールにより線の太さを変え、その線の構成要素(素材やプランなど)を変化させる。線やガラスに当たり複雑に反射や屈折を繰り返し周辺に落ちる影や複雑に変化する線への日射の当たり方と線の熱容量や比熱の違いにより変わる線の温度。
・敷地について
4つの敷地をやる。例えば品川はオフィス、北千住はエキシビジョン、インターフェース 成城は社宅など。
北千住のような敷地は周辺のコミュニケーションを活発化するといった意味で意味があるかもしれないが、成城などの個々が閉ざしたような土地で2000?といった大きいものをつくる意義は周りに開く建築ではなく、NYセントラルパークのように周辺の地価を上げることにあるのではと考えた。


・中川様エスキス

線は三次元的でランダム。線だけでは環境的にはどうにもならない。太さが大事。
1つ1つが太さの違う糸だと考える。それを編み込むと布ができる。環境のパラメータをもった環境の糸を1本1本織り込んでいく。
今のスケッチではごついイメージだが、もっと繊細なものなのではないか。
それによってどういう環境が生まれるのか。

4つの敷地において同じタイポロジーでやるのかという疑問→環境を織り込むという手法は貫いても良いのではないか。
内部で閉じるのか、外部に開くのか。どのような寄与の仕方があるのか。それぞれの地方の問題点をどのように改善するのか。
熱の影響は密度に左右される。素材のあり方も大事。
断面だけではイメージがわかない。太さをつけて断面イメージで示すこと。
誰に実現してもらいたいか、必ずあるはず。あるクライアントだからこそ、できること、やりたいこと。


北潟君
ドローイングに圧倒されました。
敷地は未定だが、ドローイングの段階では品川のイメージでした。
・コンセプト
計画的、環境的な操作によりゾーニングをまたぐような散歩道をつくる。
風と日射の有無を夏と冬に分けそれぞれの条件において必要な操作を考える。
決まった道を作るのではなく、季節や時間により変化するルートを設けてやる。
快適なスポットを結びルートをそれぞれの時間帯で作成できる。
シークエンスのデザインを温熱環境や人により選択できるようにする。


・中川様エスキス

周辺地域の影響よりもアスファルトなどの道のマテリアルによる影響の方が大きいのではないか(北潟)
横浜第三大橋 アスファルトからデッキに変わる瞬間の快適感などを参考に。
日射と風以外にももっと多様な環境的要素を考慮してその場所場所の評価と設計を考えてやる必要がある。

王さん
・コンセプト
歴史と環境を両立して考える設計にしたい。
本当の中国らしさは陰陽五行が参考になるのではないか。緑は環境的には有効かもしれないが安易に考えられない。
ランドスケープ面での配慮に庭を見る視点などの中華思想が利用できるのではないか。

環境を中国で考える際にも中国と日本では全く違う。
中国では黄砂の影響が無視できない。不用意に風を吹かせることが黄砂を拡散させることにもつながってしまう。
具体的な案としては熱を考えるときにはガラス張りの空間を、光を考慮するときには塀の利用を考えたい。


・中川様エスキス

建築をつくるときの言い伝えが科学的にどういう意味があるのかを探るとおもしろい。例えば、逃げ地図では災害時に「若者は老人を置いて先に逃げなさい」という言い伝えが、科学的に証明された。
黄砂による喘息の悪化や増加が問題になっている背景なども考えると、黄砂の影響は確かに無視できない。
中国の思想や文化の中で、建築に関わるものがどれくらいあるのかを整理してやるといい。

林君
・コンセプト
中国の駐車場問題に注目した。
中国では歩道にまで自動車が注目してくるらしい。国の所有する道路にも関わらず一般が取締をしてくる。中国は自転車→自動車→地下鉄と交通が変化していく中で地下鉄の駅が増え続けている。
人々が町を歩くという感覚から遠ざかっていく中で、駅と駅をつなぐ道をデザインすることも考えている。
車の問題解決と環境的なデザインの融合みたいなことを意識してやっていきたい。


・中川様エスキス

車にはそれが欲しくなる距離感というものがある。敷地に対してどういう距離感にいる人がそこに来るために車を必要とするかを考えた方がいい。
自転車から自動車に変化したのは人が物質的な豊かさを求めてきたから起こった転換であった。この先、人がどのような豊かさを求め、移動手段においてもどのような手段がマジョリティになってくるのかを考えなくてならない。
単純に自動車の駐車問題を解決するのではなく、どのように建築を通じて自動車を減らし、新たな価値観を人にもたらせるかが重要。

藤間君
・コンセプト
敷地は品川。
山手線などにおいて主要駅とされるが利用頻度においては少ない品川。品川にランドマーク的な建築を作り、街として魅力を持たせたい。
季節や時間帯に応じてアクティビティが変化する品川という土地に対して建築もその様相を変化していくものにしたい。最終的には1つの建築が様相を変えていく様子を1つの帯の中に表現するようなイメージ。
微気候を生み出すための滝、排熱促進のためのタワーといったようなものを設け、快適な道を作り出したい。
環境的なむらを生み出すための道の高低差をそこで発生しうるアクティビティと対応させたい。


・中川様エスキス

品川はオフィス街のため、日中は膨大なエネルギーを使用するが、夜間は急激に人口が減る。
このエネルギーの波に対しピークシフトを引き起こせるような建築を提案してみてはどうか。

児玉君
・コンセプト
敷地は品川。
オフィスビルの冷房中のヒートポンプから発生する排熱の有効利用に着目。熱を地中に蓄熱させて夜間放熱する。
建物のファサードヒートシンクなどを設けそこの卓越風と合わせて放熱を操作する。


・中川様エスキス

藤間くんと同じく、発想としてはピークシフトを目指した方が良い。
夜は何をやっても大丈夫。突風や霧を作っても支障はない。
作品としては昨年度の草川君の作品を例にとってみるとよい。

紺野さん
・コンセプト
木に着目。落葉樹、日射のカオス的な制御の現象に着目。木をメタファーとした建築。
バス停を想定している。バスを使う人のためにも、使わない人がそこに集まってくるためにも、気持ちよく利用してもらえるような。
敷地としては成城を考えている。


・中川様エスキス

落葉樹をメタファーにした建築はキネティックになる。動く屋根など。
季節によってそこにいたくなるような木が変わってくるのと同じように、建築にもそのような性質を与えたい。
樹種ごとに工学的なパラメータを切り取り比較する。それらを織り込んでいくことで建築に反映させていく。

清野君
・コンセプト
敷地は品川。
河川にかかる橋の上が一番風を感じた。
河川に建築を作りたい。河川上の卓越風向がその土地全体の卓越風向などと比較して圧倒的に安定していることに着目。
日照と風圧分布の両性質から考えた敷地の性格を反映させる。日照を考えて→風を考えて、といった分断的なプロセスに対するアンチテーゼ。

具体的には夏は日射を水面か屋根に落とし、風を屋根の下に通す。冬は日射をスラブにあてて、風を屋根の上に通す。


・中川様エスキス

初年度前スタジオの松本さんの案などが参考になるのではないか。
都市の建築をすり鉢状に配置すれば、均等に風が行きわたる。
今回の清野の方針でいくと、松本さんのように何か発見的な案になるのではないか。

富山君
・コンセプト
敷地は品川。
ヒートアイランド現象に注目して、日射遮蔽と通風を重視し地下にする。地中建築をつくる。
光ダクトによる光の導引。蓄熱スリッドを内部に点在させることで風や熱をコントロールする。
公開空地や公園などの地下にこの建築を埋め込む。


・中川様エスキス
なぜ地下なのか。地上でも屋根をつければいけるのでは。
光ダクトをどこに設けるか。公開空地や公園では地下には地冷設備が張り巡らされている。
地下がやりたいのであれば、既存の地下空間の環境的な問題点を調べる。

吉富君
・コンセプト
プラグインストリート。北千住の商店街の街路空間。非空調空間をバッファスペースととらえる。

ぼっちの居場所の調査によって把握した快適な空間を生かしたい。街路空間に木を点在させ、街路上に多数の微気候を作り出す。風の流れはできるだけ自然風をとりいれたものにしたい。


・中川様エスキス

街路空間を設計し、商店を街路に対し開かせる。街路の快適な空気が非空調の店舗の中にまで入り込んだり、商店街の外の街路にまでしみだしたりするとおもしろい。
エネルギー的に全体で小さくなるが、快適な店舗が増えるとおもしろい。最終的に街路からみた商店街の景色が全然変わったものになってくるといい。


松田君
・コンセプト
敷地は品川。
超高層をやりたい。
ミースのガラス張りの批判。外部とのつながりを強調し促されたガラス張り建築の裏では熱負荷を低減するための分厚いガラスの開発の歴史でもあった。
環境的な意味では外部とのつながりが脆弱になってきている。
外気に接触する面積の大きい超高層をやり、「いい加減な外皮」の可能性を追求したい。


・中川様エスキス

超高層において高さ方向で異なってくる開口部の設計などを考えても面白い。
まずは風を考えて
?鉛直方向の風圧の違いを反映
?周辺建物の影響を反映
の手順で開口部のスタディーを行ってみてはどうか。


米澤君
・コンセプト
敷地は北千住。
商店街から外部に漏れてしまう冷気や暖気を商店街をシェルターで囲うことでとりこむ、シェルター用に調整した空気を送り込み、商店街全体として空調してやる。
夏と冬で変化する建築を考えている。


・中川様エスキス

発想としては良い。夏と冬で変化する形態による環境の変化は良いが、形自体はもう少し考えた方が良いかもしれない。


田中さん
・コンセプト
夏は光を遮り風を通す。水があると良い。冬はその逆。川辺を利用する。
夏冬で要求される建築は違う。水上を移動し、2回交換されるものを考える。夏の建築・冬の建築。


・中川様エスキス

同時に満たすものを考えることが大事なのではないか?「モバイル建築」を考えるのか?今回は前者にした方が良いと思う。
小さい操作で済むような可動建築のあり方。ついたての利用など。光・風・熱に対する性能を操作する、重ね合わせの組み合わせ。


石綿さん
・コンセプト
敷地は品川。
下水処理場に蓋をして緑化している。下水が都市環境に与える恩恵を考える。気化熱などを利用することができないか。
子供たちが知る機会にもして、イメージを変える。


・中川様エスキス

下水場がもつポテンシャルの利用という着眼点は良い。現在は結構消極的な使い方。
地域に分散して伸びていくものを提案していくのか、下水場にバーンと建てるのか、現在ではわからない。
水だけで非空調空間ができるか?大量の水を使ったZEBをつくる。熱を熱として使うこと。
例えば、冬には水が温まった方が良い→日があたるほうが良い→表面積が大きいことが大事、など。

・全体を通しての講評
エネルギーに制約を設ける。非空調域はそれを成し遂げるための手法の一つでしかない。
他にも手法があればそれもおもしろい。



以下、あとがき。
全体的に敷地に品川か北京を選定している人が多かったように思います。
また、やや問題が一般的で、かつ急浮上してきたもののような案が多かった気がします。敷地調査に基づいた問題や発見がまだそこまで反映されていない案が多かったです。
個人的(茅野)には何人かエネルギー問題により直接的、シビアに切り込んだ案が出てきてくれるとうれしいです。

次はいよいよ中国調査です。
ここまでのみなさんの努力が中国でどう花咲くか期待です。


以上。