末光先生レクチャー

本日は末光先生にレクチャーをしていただきました。

自然体の建築

震災を契機に自然と人がどのように付き合っていくべきか考えている。

自然体の建築とは、
1、自然の秩序に従う美しさを持つ建築  Form
2、自然の中にいるような快適性を持つ建築  Comfort
3、自然の循環系の一部となるシステムを持つ建築  Eco System

BIOMMICRY = 「バイオ(Bio)」+ 「ミミクリー(Mimicry)」生物+模倣
自然の形状を参照しながら工業などに利用していく分野
メタファーとしての自然から、テクノロジーとしての自然へ
アールヌーヴォーなどの単なる形態の模倣ではなく、そこに潜む秩序・合理性を見据えるデザインを標榜する。


以下、実作をご紹介いただきながら、自然体の建築、テクノロジーとしての自然についてご説明いただきました。


Kokage
影をデザインする

末光先生の同級生のご実家
老後、リタイアした後の生活

木陰はなぜ快適なのか おおきく3つの効果があると考えた。
日射遮蔽
照返しの防止
蒸散効果

10個の木陰ユニット
いろんな場所をつくる

大きな屋根をつくると真ん中に大きな影ができる
小さな屋根をつくり、トップライトをとりながら全体的に明るい空間をつくる

輻射冷房ユニット
夜は間接照明になる

自然の秩序に則りながら、いろんな場所をつくることを考えた。



地中の棲処
地中の快適性

地形の立体測量 正確に敷地形状を読み込むことで、場所の性格付けをおこなう

地中温度をしらべる 5mくらい掘ると、夏冬の温度は5℃くらいしか変わらない

地盤・地質の調査 想定地層図 2〜3m下に岩盤層があることがわかり、そこに基礎を着地するようなものを考えた。

地中の階段、1つの風の通り道として利用。クールチューブを建築化したようなイメージ

すぐ外に出れるように、室内は基本的に土足、土間にしている。

部屋によって高さが違う。プライバシーや机の高さなどを反映した。


葉陰の段床
間接光に満たされた場

ライトシェルフを建築化する?スキップフロアなど

葉っぱの蒸散作用を利用する

雨水を利用する灌水システム

ルーバーの配列
柱の鉄骨にたいして、つき方が3種類
下のパネルに対して影が最小限になるように設計

有機的な配列の方がある意味では合理的
パネル、ルーバーは水を含むだけで6度くらい下がる。


嬉野市社会文化体育館 塩田中学校
風景と向き合う幾何学

コンテクスト1
伝建の風景 佐賀の山並み 

コンテクスト2
水害対策 海抜が低い 河湊して栄えた場所
20年に1回洪水がおこる

高床のネットワークをつくる ランドスケープマスタープラン
周辺施設への接続 公園の園路との接続
避難経路となる

洪水時の貯水池 地域のパブリックスペース

折れ屋根がつながっている建築をつくる

二重性を持つような幾何学
家型をY型にする

フラクタルな形状
XXSからXLまで 機能が変わっていく ベンチから体育館まで

雨水をY型で集めて、中庭に散水する。中学校というなかなか冷房を入れられないところで涼しい風をおくってやろうとした。

音と折り紙の形状の関係
アンズスタジオ 特殊なプログラミングをしてくれる事務所
音響解析プログラム 永田音響
4次元 幾何音響シミュレーション 反射音のシミュレーションまで行う
初期の反射音ができるだけ均質になるかがいい音響ホールかのポイント
折り紙形状を形成するプログラムと音響プログラムでフィードバックし合う

ミウラ折り

形態生成と音響シミュレーションが連成している例は世界ではほとんどない

ハザードマップ 逃げ地図に倣ってやってみた。
Phase1 橋を通じて北側高台に避難
Phase2 市役所・アリーナで洪水が引くまで
中庭に貯水する



東京理科大
末光スタジオ
タワーマンションオルタナティブデザイン
環境と経済を考える

通常ならタワーマンションが建つところを多孔質の形状の建築を考えることで、ある程度低層に抑えた建築を考えていった。



質疑

小泉君
テクノロジーという言葉の意味について。科学的な原理として、形態生成のための原理としてなのか。
両方のことを意味している。

メタファーとテクノロジーの線引き
メタファーは恣意性を帯びるリスク。ポストモダンみたいになる。
テクノロジー、自然界が形成している有機的な原理を引き受けている

羽鳥さん
末光さんとは共感しかない。
ロジカルに説明できているようで、必ずしも環境解析からするとベストじゃない。
環境工学的な説明をしなくても素敵な建築。
さらに環境工学的な説明をするからさらに素敵。
どこを始まりにして、どこを終わりにするかはセンスのたまもの。

普通の設計で満たしていないと、環境の設計としていいものを作っても意味がない。
遺伝子レベルでデザインされていること、その後にどのように育てるかというデザインがある。
その後者のツールとして環境を利用している。

環境建築として言っている限り、主流ではない。カウンターカルチャーでしかない。
直観的に気持ちいいということを感じることができる人材を育てないと、主流にならない。
論理的な説明を要さないと素敵な建築にならないとはいけないのは建築としてはだめ。

理科大の課題において、
ヴォリュームスタディレベルで環境的な新しいパラメータを組み込んでスタディするということで、スタンダードとして環境を学んでいくのではないかという期待はある。

中川さん
仙台メディアテークのときは佐々木さんがリードしていて、構造が主要なパラメータだった。
伊東さんのイメージとしては、チューブの形状が光を求めて上に広がったりしているものもあったが、
イメージに留まった。環境がいまひとつ空間を決める決定的な要因になりきれていないのはなぜか。

一番大きな理由は、空間的なことを語れる設備エンジニアがいないこと。構造設計者と違って、目に見えないものを扱っていること、機械を用いていることで、リスクを取ってしまう。
自分自身(末光先生)は段々外の話をしようとしている。未開拓の領域、プリミティブな世界に踏み込む。

原研哉さんに環境建築と言えばなんですかと言われて、ぱっと言えなかった。
構造と違って、スカイツリーみたいなわかりやすいものがない。
環境という分野は、ぼんやりしている
評価の仕方も変わっていいのではないか。利用者全員にアンケートとか。

環境建築は、体調や天気によって全然印象が違う。
写真で見るのと、体験するのは全然違うということを九州の建築ツアーでいわれた。

西倉君
設計する際に、ツールが先行するのか、網羅的にやってツールを選ぶのか?

網羅的にやってもダメで、敷地を見に行った際の第一印象は重要で、
とんがった部分をいかに建築にとりこんでいくか。


末光先生貴重なお話をありがとうございました!
羽鳥さんや西倉君の質疑にあったように、ただ網羅的にいろんな要素をドライブさせるのではなく、
重要な要素を拾い上げてデザインするそのバランス感覚がなかなか真似できないものだなと思いました。