TA統一エスキス

最終堤出まであと2週間ということで、色んな人の意見を聞いて案を膨らませる段階から、案の完成度を上げていく時期になりました。それぞれの案が進む方向性を統一するために、今回のエスキスではTAが受講生にアドバイスをする場を一つに限定し、一人一人の案を順番に見ていきました。


●米澤くん

球の配置の間隔を考えた。冬の日射が隣の球にかからないピッチが500m間隔だと割り出した。しかし、北京で言えば6環より広い範囲で置いても1万2千個しか置くことができず、一つの球に対して100人収容なのでそれでも100万人しか収容できず、北京の人口2000万人に対して心許ない。一番上が常に暖かくなるので、そこに菜園や畑を入れる。日射が必要な面積分に関しては、なるべく日射を遮らないような配置にしたいが、そうすると空間が疎になりすぎるので配置が難しい。

TA
いくらなんでもスラブが疎すぎるように見える。また、表面が開いたり閉じたりするような操作はするのか。真夏とかずっと閉じていたら、40℃50℃行くかもしれない。シェルターでありながら、季節ごとの環境的な危険性をどう回避するのかのロジックは必要。この球の大きさやスラブの入れ方を決めるストーリーは工学的に徹底的に検証されていなければならない。全体のシステムの成立のロジックの整理、環境的な優先度でプログラムを配置していくロジックの整理をして優先度を決めて組み立てるのが良い。


●田中さん

北千住の荒川の周辺を敷地に考えていて、市街地に川の風を流して、快適性を上げたい。堤防に色々なものを付加することで市街地の道に風を流すことを考えた。20m高さの壁を建てることはわかっている。太い道があるところに一里塚的に配置していくような風景が描ければ良い。

TA
まだ1枚だけ立っているシミュレーションしかしていないのでそれが複数枚あったときどうなるのかが気になる。20mの高さはさすがにきつい。6mぐらいの高さでいけないものか。一つの道に対して一枚の壁ではなく、分割されたようなもので良い性能が出せないか。形としても大きさとしてもなるべく弱い操作になり、それが小さな建築として河川敷にも街側にも役に立っているようなものを目指して欲しい。このままシミュレーション続けて形状を決めていくのが良い。


●小原くん

プログラムは民俗博物館を考えている。中国の小都と呼ばれているような地方の少数民族のための都市にも美術館はあるが、そこにあるのはその地方とは関係ない、中央からきた美術品ばかりである。実はそういう少数民族の美術を展示する場所はない。各ボリュームを傾けてその地方の気候を再現しながら、それぞれの地方の美術品を所蔵する美術館を考える。ボリューム同士の配置は極力それぞれの気候に影響を与えないようなものにしている。スラブをボリューム同士が貫通させることによって動線としても働きながら、環境調整の装置としても利用する。

TA
気候とともに展示するというアイディアは良い。ただし季節によってはその地方の気候が再現できない時が必ずあるので、その時のストーリーにも説得力を持たせなければいけない。また、その地方の気候を再現するのならば、各ボリュームのプロポーション、断熱性能、熱容量も変わってくるはず。例えば、マイルドな気候を再現するのだったら高断熱高熱容量になる。その地方の気候を再現するのであれば、その地方の作物も栽培すれば良い。ドライブさせる余地がたくさんあるので頑張って欲しい。


●兒玉君

街区全体をやるのはきついから、一番ピンポイントな場所のスタディを行なった。屋上の放射板の造形としては前回まではあからさまに刺した表現をしていたが、既存の屋根と一体化させて後付にみえないようなものになることを目指した。熱を吸う場所は既存の建物の隙間の両サイドの壁側からだと考えている。

TA
熱を吸う部分の「きのこの根」の部分のデザインがかなり大事。効率よく熱を採取する形として建築の中に差し込まれながら、家具としても使えて人のアクティビティと関係しあうのが良いのではないか。次のエスキスまでに、根の部分と人のアクティビティの関係を10個ぐらい描けると良い。
飲み屋の中のプランについては商店建築という雑誌が図書館にあるので、基本的な寸法の参考にして欲しい。


●藤間君

ノマドワーカーのためのオフィスを作る。東京の中では体験できない環境をビルの中に再現し、働く人は様々な環境の中を移動することができる。日射の入れ方、風の通し方でまずベースの環境を作り、そこに熱を移動させるシャフトからの放熱、空調の室外機、室内機からの放熱が重なり狙った環境ができる。例えば最上階のジャングルでは、基本的には熱を出すパイプが多く配され温度が高く、クーリングタワーがあるため湿度が高くなる。しかし一部には冷たいパイプが通っており、そこはガラスで囲ってワークスペースとする。

TA
ネタは出揃っているのに整理が下手で図面まで落ちてきていない。考え方としては、空間のプロポーションや組合せ方でパッシブな温熱環境が生まれたところに、どういうプログラムを入れたいから、どのようにパイプ、室内機や室外機を入れていくというステップで部分から組みたてて行けば良い。全体のシステム、温熱源と冷熱源、室内機と室外機のバランスがどうなっていて、合計でどの量の暖房負荷、冷房負荷の空間を担保できるかという試算も必要。局地環境ではない普通のオフィスの部分の入り方も考えた方が良い。


●清野くん

川の流れを巻き上げるような造形の建築。ビルのファサードを螺旋状に切り欠き、そこに住居や商店が入ることでオフィスと都市、川の境界を連続的にしながら、非空調領域を増やしていきたい。

TA
普通のオフィスにこの螺旋を組み合わせることで、どう働き方が変わるとかいうストーリーが示せれば良い。今の造形と清野くんが建築で言おうとしているものが一致しているから良い。螺旋の空け方が太陽に対する方位性や、面ごとに直面している環境負荷を反映していればすごい良くなる。螺旋による周辺敷地の読み込み方については中央アーキの外苑前ビルディングを参考にすると良い。


石綿さん

敷地のそばにある小学校が、800人弱と港区でトップクラスの児童数を持つ。かといって高層マンション開発で増えた子供たちなので、十分な遊び場があるわけではない。浄水場の内部の仕事環境を良くしながら、上の方を遊び場として使えるようにする提案とする。施設の場所特有のグリッド、水槽の大きさの寸法を形態操作の手がかりにしていきたい。高低差のある地形が子供たちに求められているので山のような造形を作る。臭気の話が今は良くわからなくなってきるので、その話は置いてある。

TA
今の案はすごく均質であるので、コントラストをつけていく手がかりが欲しい。グリッドの大きさによって造形が変わっていくという操作になるのかもしれないが。それぞれの水槽のなかにある水に対する関わり方を建築化する方向が良いのではないか。一番汚染された水が見かけも悪く、匂いもあるのだったら、その冷熱だけ使えるような携帯操作をする。最後の水槽の中にある綺麗な水は表出させれば良い。水との関わり方を建築化することによって豊かなランドスケープが形成されるような案を作って欲しい。


●富山くん

四合院の形式を参照し、その環境を立体的に拡張することによって、北京にいる全ての人が集えるような場所を作る。ボリューム配置でスタディするとよく分からなくなったので、ソリッドな外枠を最初に規定して縦横にボイドを切り欠いていくような設計をした。例えば縦に深く空いた穴は四合院のような安定した環境を作る。大きいボイドを中心に住戸が展開する。前回までのようなスタディだと、全体が薄ぼんやり暗くなってしまうのでこういう案にした。
TA
前回までやっていた四合院を積むという操作で実現しようとしていた空間の室は貫かれているのか。造形のやり方は今回提案してくれた彫塑的なものと前回までやっていた組立式のものがあるが、木造文化の中国に建てるのであれば、組立式の方が良い気がする。しかし、彫塑的な方が建築を組み立てていきやすそうなので、2つの間を狙った造形をして欲しい。富山くんが当初から問題的していた貧富の差という話をもっと建築まで落とし込み具体化した話をして欲しい。集合させるという価値をどう建築で実現するのか突き詰めて欲しい。そこに強い自己主張を込めることができればもっと良くなる。


吉冨くん

衰退していく商店街に対して街づくりのツールを環境方面から提案したい。日射遮蔽と植冷たい輻射熱源としてツタを貼ったスクリーンを利用する。すると店舗の前面に非空調の区間ができてくる。日射遮蔽のスタディによってツタのスクリーンの形状が決まった。植物は路肩の部分が余裕があるのでそこから生やし、上に絡ませていく。スクリーンの大きいところには多年草の植物を、小さなところには一年草の植物をつける。
TA
吉冨くんの案はプレゼンで全てが決まる。今まで綿密に調査してきたプレゼンテーションの手がかりとなる、商店街のアクティビティを自分の設計する部分と合わせて早く絵としてアウトプットし初めて欲しい。文字での説明から脱却しよう。植物の配置についてはプログラムに適したものを具体的に組み合わせていくのが良い。店舗の裏に出来上がる通風の塔は店舗それぞれに個別のデザインをしていければ良い。


●紺野さん

駅ビルの空調された空間の中に閉じ込められている時間、お金、場所を、非空調領域をもつものとして設計し直すことによって解放し、成城学園の街ぜんたいにつなげていきたい。のユニットをパタパタと折って配置していくことにより場所を作る。空間の展開方法と人のアクティビティを組み合わせて適切なプログラムを配置していく。
TA
現状では床面積が既存のものに対して圧倒的に足りていないから、面積を増やす操作をする。現在は10m角のキューブを作るユニットしかないので、小さいユニット、大きいユニットを付加していけば、床面積も増えるし、建築空間がもっと具体化していくのではないか。ユニットの配置によって周辺敷地の読込が表出するというはなしは非常にしっくり来る。案をこのままドライブさせて欲しい。


●王さん

砂を飲み込む建築。建築全体の形状、砂をためる谷、ファサードの鱗などの校正要素が汚染物シミュレーションで性能が実証された。プランは動線計画や美術品、機能の配置により組み立てた。

TA
この建築はまずは特異な外部空間を形成しているはずなので、外構の植栽・環境の計画を個別の場所でしっかりして欲しい。また、平面計画と方位性の結びつき方をしっかり考えて欲しい。現状の案にはガラスの部分が設計されていないので、温熱環境シミュレーションをしようがない。まずどのようにガラスの入って行くかを決め、そこの空け方を検証していけばこの建築の内部と外部空間の関係性と、方位との関係性がようやく見えてくる。

松田くん

ゼオライトが色々な形でビルに付着していって、そのビルの環境をよくしていこうという話。作り方にあまりに取っ掛かりがないから構法の方向から考えようとしている。石を積層させて組んでいくやりかた、ボードにしてしまって空間を作っていくやりかたなど。ただ、空間を作っていくロジックが見つけられず悩んでいる。本来はビルの上空の方で窓を閉めきっていることに対して、強い風をやわらげながら、中に取り入れられるようにしたいという同期で建築を作り始めた。ゼオライトは匂いを吸着する力もあるので活かしたい。

TA
一つのビルを設計するのではないか。色んな環境負荷に直面する敷地、ある面は臭気、ある面は風、ある面は日射に直面していて、それに最適化したゼオライトの組み方を考え、ビルの全体像を作っていくのが良いのではないか。設計するビルは、リノベーションでも新築でもどちらでも良いが、一つのビルとして設計しないと密度の高い最終成果物ができなそうなので、一つのビルに集中して設計して欲しい。


●北潟くん

食肉工場の配置図計画を合理的に決めた。臭気の脱臭作用を外部にも貢献させるため、まわりの風を取り込むような地割を基本とした。工場の内部は、一階レベルは何も遮るものがないようにして、一定の風の流れを作る。風の流れを終端部にこぶを作り、そこに臭気を通らせることによって浄化をする。吸着された臭気成分は肥料となり、コブの上にはお花畑ができる。

TA
今は話を聞かなければ建築全体のイメージがわかないので、工場の配置、臭気を吸収する組物、その上にある丘が表現された模型を作って欲しい。それとわかりやすい断面図があれば良い。案は行けそうなのでアウトプットし始めて下さい。

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エスキス内容は以上です!全体として見られるのは、一歩一歩は進んではいるけれども、なかなか案の本丸を攻めずに停滞している傾向です。苦手な部分もしっかり手を動かしてレベルアップして行ければ良いなと思います。あと2週間頑張って行きましょう!!