講師統一エスキス

最終提出まで2週間を切ったところで、このエスキスで案の方向性を固めるため、講師の方々全員で一人一人の案を見ていくという形を取りました。
来て下さった講師の方々は羽鳥様、末光様、中川純様、前先生です。

   

以下、エスキスの概要になります。



○紺野さん

L字型を2つ組み合わせたユニットを考える。すると、屋根・壁のでき方が8種類できる。これらを組み合わせることで建築を組み立てていく。駅や周辺環境、風環境によってプログラムを規定していく。現状と違い、街にオモテを向けて開くことを考える。

 

羽鳥様(以下H):シミュレーションによって、変えようと思っているところは?どのような環境を作りたいのか?何を良しとするかがないと決まらない。またそれは、いろんなシチュエーションを想定していることが大事である。まだ形との関係性が薄い。
前先生(以下M):風を最適化したいという形には見えない。プレハブなのか、しっかりした建築なのか、そこも想像できない。
H:これは見せ方の問題。ロジックの組み立て方である。
中川純様(以下N):木漏れ日が今もキーワードなのでは。基本の方針は良い。まずは日射をもっと細かく見るべき。
H:プログラムは商業施設?組み立てのロジックは、商売として成り立つ場所をつくる→風を利用するという流れの方が良い。
M:ディテールまで詰め切っているということが大事なのではないか。こだわっている感がないように見える。
H:画一的な何かで全部解く、という風にならなければ良い案になりそう。
N:シークエンスの問題。日射・日影を肯定していく。良い場所・悪い場所を評価していくこと。
H:選択する余地をうまく見せられないといけない。
M:スケールも同じなので、どこに多様性を持たせるかが大事。
N:この案の肝は「環境による知覚的な多様さ」である。



○小原くん

受熱環境を変えることで建築の環境を考える。中国の主要な都市を調べると、10種の気候区分が出てくる。プログラムは民族美術館とし、それぞれの都市の気候を展開していく。北京との気候差を手掛かりに傾斜に当たりをつけ、マテリアルによって詰めていく。

 

H:それが証明できるかにかかっている。マテリアルだけでなく、スケールの問題も含められると良い。しかし、まずは傾斜とマテリアルで良い。
M:中国の気候を再現するというのは納得できない。湿気は論じていない。この形である理屈は別に用意した方が良いのでは。形はこれで良いが、理屈は別。
N:生成原理から行くと、1本1本が完結するのは難しい。分散をつなぐことを考えることが大事なのでは。テーマはずごく良い。
H:完全な気候を再現する必要はない。どのように展示空間に環境の要素をふまえるかが大事。話の順番を変えれば良い。熱だけでなく光環境も大事である。ずっと晴れているとか。
N:温熱環境はここの地域と説明する必要はない。無意識に感じる、で良い。
M:苦し紛れでないということを伝えること。納得感が得られるか。
H:展示されるものはどのような時どう使われるか、しっかり調べること。
N:温熱環境を操作することは無意識を操作すること。



○北潟くん

食肉工場の臭気問題を解決する方法として、土壌浄化装置の仕組みを利用する。土の下に空気層をつくり、臭気を土に多く吸着させ分解させることで、土壌も豊かになる。外気を多く取り込むような山の形状で、上にはお花畑などをつくる。

 

N:随分良くなった。
H:屋根の形はどうなったか?工場としての働く空間まで言及できると強い。光や気流など。今までは臭気によって自然換気ができなかった現状に、どれだけ貢献できるかを言えると良い。趣旨と結果を簡潔に言うこと。共感はかなり得られやすい案のはず。
N:細かいことはどうでも良い。案は良いのに、最後の方失速するイメージがあるので、やりきってほしい。「社会が変わった」ことを示すこと。
H:寺澤さんの案はヒートアイランド現象にどれくらい寄与できるかきっちり計算できていた。
N・H:迷わず行くように!!!!!



○吉富くん

商店街の衰退に対して、づくりのツールを提案する。蔦植物による涼しさ、その冷気の建物への取り込み、地面が土の屋外空間を考える。庇は手がかりを影として、庇の伸び方を考えていこうとしている。

 

末光様(以下S):類型は何種類かあるのか?
H:日常のディベロップなので、以前の問題をしっかり示さなくてはいけない。
S:何のための提案なのか、はっきりすること。
H:地味なのは良いが、どれだけ本気かを伝えること。どれだけ精度の高い空間になっているか。
M:物凄い時間をかけたことを感じさせること。
S:緑のかけ方をテーマにしたいのか。
H:これによって空調空間が減ったとは感じにくい
M:これは建築の操作ではない。どのようなパラメータをもって突き詰めるのか。
H:見せ方の問題。何を相手に、何を良くしたのか。確実に良くなっているというところ、文化的な希望的観測のところを分けてプレゼンした方が良い。四季の変化もしっかり表す。
S:植生だけに見えては弱い。
N;他に考えているのだから、プレゼンにちゃんと入れ込むこと。
S:ストーリーを強化するわけでなく、緑のかけ方のデザインに力を入れた方が良いのでは。それによりどんな多様な影ができるか。
H:植物が育つアルゴリズムが存在するくらいなので、そのようなものを反映させられたらと良い。



○林くん

ヤオトン空間から地下鉄を構想する
ヤオトンの要素をグリッド・動線・拡張性の3段階と捉える。B1は周囲空間からボイドを考える。B2はB1でもグリッドの交点を中心とした光を取り込めるボイドを考える。B3は地下鉄の風を引き込むところとしてのボイドを考える

 

H:これはかなり広い面積がないとできない。内部空間の絵をもっと魅力的にしないと。
M:地下鉄をなぜヤオトンのロジックでやるのか。その前提を入れること。鳥瞰のパースは良い。何が起きるのかのプログラムがないと、この面積が正当化されない。
H:地下鉄の内部発熱量は想定しているのか?例えば東工大の梅干野研究室では換気について研究されている。
S:人の発熱が多い
H:ヤオトンに加えて何かがないと。ヤオトンを適用してハッピーになるのか。光に関しても、断面の形やテクスチャなど。
M:細かい操作がどうなっているのか。
S:解析しているのに関わらず、ヤオトンの適用の仕方が「掘る」にとどまっている。
M:天井厚などのスケール感をもっと適用させないと。
H:ヤオトンよりは涼しさを得られそう、人の多さとのバランスも考えられたら良い
S:形態の生成論理を深く読み取れてないため、メタファーに見えてしまう。掘り方の原則。M:空気の温度を決めるためにはどのような要素が関わってくるのか、とか。
S;堀った土をどうするのか設定しても良い。自分だけが知っているヤオトンを引き出さないといけない。
N:歴史からは環境的な原理は読み取れないので、シミュレーションから発見していくしかない。
H:できることなら同じ位の気積の洞窟を実測してみるとか。中にいる人の快適性は?



○米澤くん

自給自足型の球体建築をつくる。球であることで、空気の流れをなめらかにする。球の中をえぐっていき、人々は太陽の動きを追うように建築の中を循環しながら生活する。

 

H:構造的にはどうなるか?スラブがもたないのでは。
S:えぐり方はどうなっているのか?それが気になる。構造的な合理性がかなりのウエイトを占める。簡単に説明できるように。100人は少ない。
M:提案していることを実現するロジックは?形の合理性の裏付けがほしい。熱が上に循環する、だけでは弱い。
H:環境的には何か言えるかもしれないが、建築的には著しくおかしい。他の形を比べて球の何が良いのか?
S:実現することも素晴らしくないと。
N:建築として実現させようとすると圧倒的なナンセンスに陥る。その矛盾を暴くのか?
M:全部ガラスでは多様性が生まれる気がしない。対極の素材を使っては。循環のイメージできない。機械の力を使っていてはいけない。
H:水の循環に関して言えば、中の人の使った水が上に行くのか。
N:パースには屋外に人を入れてはダメ。共食いしているヤギとか。
M:「循環」がキーワードになるはず。オモテ・ウラの論理をしっかり固めること
N:熱を集める・熱を放出するなど方法論をまとめること。



石綿さん

下水処理場に土の大屋根をかける。また、5mグリッドにしたがって地面に凹凸をつけ、水の蒸発を促す。プログラムはオフィス空間とこどもの遊び場。

 

S:煙突案はなくなったのか。
N:三次曲面+煙突のイメージをもっていた。
H:再開発中のビルへの批判はあるべきなのでは。どうしても、北潟くんと比べられざるを得ない。大量に水があることをポジティブに使わないのか?
M:どこを売り出すことができるか?
S:浄化させるのは土で、浄化した後の水の利用の話は別、というのは本末転倒感が否めない。煙突とかの臭気を逃がすシステムと地上に生まれる空間は一体的であるべき。
N:煙突の方が良かった。煙突は周りの空気を誘引させる装置。
H:煙突をデザインすれば良い。
M:高さだけでなく、負圧を最大限引き出す仕掛けを考えること。引きはがす力を利用する。
S:煙突の下で皆がめっちゃ楽しそうな光景。
M:何のための高さなのかをしっかり考える。
S:事例を探すだけでも参考になる。



○富山くん

共有できる空間をつくる。四合院の中庭空間を3次元に展開していく。視覚的なつながり、日射取得のための縦の因子、庭のつながり・通風のための横の因子を展開させていく。それをからませることで共有空間ができ、垂直動線確保する。

 

N:非空調とどう絡めるのか?
H:リサーチがナラティブすぎて、まだ浅い。環境的な発見はあったのか?
S:形式的な模倣になってしまう。
N:通風がされないのであれば、そこには必ず理由があるはず。
S:歴史を乗り越えた形式にするにはかなりの説得力が必要。
N:もうちょっと四合院を尊敬しては。セキュリティだけでなく、良い部分もあったはず。
H:揚げ足取りに見られないように。
N:悪い部分を三次元にすることで解決する、というストーリー。
S:例えば、抜け道最低限で風が抜ける方法を四合院から展開した、など。
H:本来両立しないものがしっかり解けているなど、コンフリクトがない。
M:超オープンなプライベート空間、とか。
N:最大限のボリュームに最小限の操作で非空調空間をつくる。



○藤間くん

ノマドワーカーのためのオフィス。内部に様々なスケールの空間を展開し、そこに温熱・冷熱を移動させるシャフトによってさまざまな環境を作り出す。

 

N:温熱環境によって、どういう作業内容・時間が良いのかのバックグラウンドが必要。
H:人気がある場所はどうなるのか?予約制ではノマドの意味があるのか…
M:密度がこれで良いのかが疑問。シャフトが空間を作っている感じがしない。パイプの本数が足りない。
S:輻射の機能はこれではない。空気で送るのでは人工的すぎる。人工的なハワイをつくる娯楽施設と変わらない。
H:全部が全部特殊な空間なのか?普通のものとのバランスがわからない。
N:空調=生産性・非空調=創造性は良いが、空間に表れていない。
H:単なる生産性から創造性へという研究は沢山なされている。もっと深く掘りこんでいかないと。
M:シャフトに命かけてます、というのを見せないと。
S:上下階の濃淡を作る仕組みとか。
H:人が快適に感じる要素をどう盛り込んでいくか。



○兒玉くん

北千住西口の繁華街への提案。建築同士の隙間に電化冷蔵庫を挿入する。人のアクティビティと関係づけを考えている。

 

S:模型がすごいことになっている。
M:建物に熱的な何かを挿入することが大事なはず。暴力的ならそれを貫けば良い。屋根はその形で良いのか。
S:ストーリーは良いのだが、建築のデザインの強度が弱い。
H:これを採用している良さをもっと引き出せないか。
S:行き着く先が、これを発明した人が偉かった、となりかねない。
M:スカイラインをこうしていくというストーリーをつくるとか。
N:ストーリーは悪くない。
H:ビフォアをしっかり見せないと
S:あとは説得力をもつかというところ。風景としてできあがるものが、ソーラーパネルとあまり変わらないように見えてしまう。のっけるのでなく、さすことの意味は?



○清野くん

薄いスキンの重ね合わせによって屋外から非空調、空調空間をグラデーショナルにつないでいく。それは駅からの流れ、川の流れを巻き上げるようならせん状の動線を持ち、各壁面は周囲の状況に応じて建築的に、環境的に応答する。

 

S:建築的な思考ができるようになってきた。
H:すごく良くなった。今言ったことをちゃんと表現できるか、また、しっかりプランに落とせるか。
M:現実的な設計とかけ離れているのはどうなのか。
S:何が主題なのか。
H:プログラムを混ぜることで、主題がぼやけてきているのが気になる。
S:住宅はいらないのでは。周辺環境からのグリッドの操作は内部空間につながってくるはず。住宅でやるのであれば、オフィスとの差異まで踏み込まないといけない。
N:もっとファサードに多様性が出てくるはず。螺旋を意識しすぎている。
S:周辺から環境的な要素ももっと反映させないと。
N:ダイアグラムに周辺も入れて、周辺への応答を示すこと。
S:オフィスは均質な環境だけでない。説得力のあるプランをかけるかが勝負。



○王さん

外形・谷・うろこの形状を細かくスタディ。そこから光・熱環境も考え、方位性のある建築にしたい。動線は中心をコアにして派生していくようなもの。最後の模型は3Dプリンターで作る予定。

 

S:アウトプットする模型がちゃんとできるかが心配。一回は今すぐ試した方がよい。うろこはうろこでつくる。
H:どれくらいの精度でできるのか。まずは、砂にうずもれているのがきれいにポジティブに表現できないと。
S:ヒトデを削り出すとか。
N:どうかって精度を上げていくか。ストーリーは良い。
H:省略するセンスが重要。何を大事と思うかをしっかり伝えること。



○田中さん

堤防の位置に壁を建てることで、河川の風を街区の方へ促す。壁は、水や電気をとれるような設備コア的なものを考えている。

 

H:屋根とかはないのか。
S:普段見えないものを見つけて操作する、その視点は良い。ランドアートみたいなもの。
H:アートとしてやりきる。環境的なランドアートはかつてない。しかし、10mは高い。せめて半分…。
N:鳥瞰的なパースに壁が建つところ。
H:街区への良い影響も表現できると良い。
N:それぞれの道に対して解を見つけられると良い
H:日本中の一般解になり得る。普遍解として提案できると良い。
N:早くプレゼンをつくること。
S:壁に機能をもたせるか。アルミの板で除湿するとか。
N:やりたいことをきちっと言い切る。



○松田くん

シロアリの塚を転用。既存の外壁にゼオライトをつけていく。風やにおい、日射、排気ガスなどの環境的な要素それぞれに特化した形態を導き、一つのビルに様々な表情を出すことを考えている。

 

H:まず、ある程度作ってしまった方が良い。
S:スケッチブックの文字が多すぎなので、まず作ること。
H:フィルタリングの問題は解けるが、採光は怪しい
N:アリは目が見えない
H:矩計を書いて検討した方が良いのでは。ガラスは採光するところと呼吸するところがある。そこをまずはふまえることが重要。ダイアグラムのようなスケールでは進まない。
S:オフィスに必要なガラス量は?そこからゼオライトのスキンに作り方を考える。
H:従前のものがどうで、何を良くするかを考えないと。結局イメージになってしまう。
N:全部をそれで作ろうとしているから手がとまっているのでは。
H:ゼオライトは交換しないといけないのでは。
N:自然にあるものを適用しようとするとどつぼにはまる。自分なりの解釈が必要。
S:オフィスにこだわるのか、ゼオライトにこだわるのか。オフィスの中でも暗くて良い機能は?眺望の問題もある。
H:ポツ窓にすれば良い。



今回はどこを強みとして、残りの時間どこに力をかけるべきかがより明確になったのではないかと思います。
あと1週間半、悔いのないように突っ走っていきましょう!

TAも精一杯サポートしたいと思いますので気軽に院生室に来てください!