敷地調査発表

レクチャーに続いて、敷地調査の発表・講評・パネルディスカッションを行いました。

以下が大まかな発表・講評概要です。



・1班

熱環境を考える時、日影図を重ねていった日影のグラデーションが影響しているのではないか。また、都市の凹凸・ひだによる表面積は重要なファクターとなるのではないか。同じ土地面積における建築面積・延床面積・表面積を比べてみる。すると、例えば延床面積は品川が一番大きいが、表面積は北千住が一番大きいという結果となった。

中川様:仮説を提唱して、それを検証するために調査を行い、結果もでているといういい例である。
北千住は表面積が大きいけれども、延床が小さいという結果は面白い。ヒートシンク的な都市と言える。ただ、それが良いのか悪いのか。指標を良い方向で言うか、悪意を持って言うのか。自分なりに何が良いか決め、デザインできると良い。



・2班

CFDによる風解析の結果とスケッチアップによる日照シミュレーションの結果を重ね合わせてみた。
品川は日射・風の影響が大きく、大きなムラが短いタイムスパンで変動している。それに対し、成城・北千住では小さなムラが長いタイムスパンで変動している。また、品川において街の人々のSET*を求めてみると、概ね風と日射の重ね合わせ図に対応した結果となった。

中川様:仮説がしっかりしているが、シミュレーションの解像度が同じなのが少し残念。成城・北千住においては解像度をもっと細かくしていけば、違った結果にならないだろうか。また、こうした手法で類型化できたというのは良い成果だが、温熱ムラと人の動きの相関関係を出すことができないか。そこから自分自身の指標に持っていくことができると良い。



・3班

まず、敷地に人の行動・日射・風・緑の分布などのレイヤーを重ね、調査ルートを設定した。そして、それぞれの項目について事前に評価し、また実際に行って評価を行った。例えば、品川は思ったより人がいなくて下水場がにおった場所があったというような予測とのギャップがあった。また、ルートの前後の差によってより快適・不快に感じるといった影響にも気づいた。

中川様:非常に主観的な調査だが、ツールを使いこなせていないだけとも言える。例えば、成城では住宅街に入るとポンと評価が上がっている。環境の感じ方というのは「シーン」ではなく「シークエンス」によるというのが実感できたところが良かったと思う。



・4班

駅や公園などの場所以外の、設計のための手がかりとなるような「これぞ」というパブリックスペースを探してきた。「ぼっちの居場所探し」。これはひとりの方が環境に対して敏感になるという仮説に基づくものである。例えば品川では、海風による風の強さ、植生による放射の影響が大きいのではないか。成城では廊下空間を抜けてくる風、北千住では木でできたベンチ・特徴的な狭い路地からの冷気などに着目。

中川様:手を動かしてスケッチを描いているのが良いところであるが、まず仮説があった方が良かった。なぜそういう風に感じるのか原理を追求し、各スポットにおける疑問をもっと深く突っ込んでみるべきである。そういったものをつなげていくことで街ができ、調査内容自体は、温熱環境のパターンによる分類を目標とするという内容とも見ることができる。



・5班

敷地のS,M,L,XLの分類がそもそも変だと思っていた。今回は風に関する調査から、それらを再解釈してみたいと思った。XLは季節風、Lは水辺・斜面・ビル風、Mはグリッド、Sは道としてそれぞれについて考察。敷地ごとにそれらの力関係を把握し強いファクターを抽出することで、設計で重点的につくポイントがわかるのではないか。

中川様:風だけで見てしまったのが難点でもあるが、強い意志を感じる。敷地を風で構造化・分析していて、方針としてはすごく良い。しかし、風は散逸的で非定常であるためにこれだけの評価で正しいことが言えているのかはよくわからない。また、人間の視点が抜け落ちているところが惜しく、加えてほしい。



・総評

まず、誰一人提出の時間を守らなかったのは良くない、時間内にというのは大原則である。

しかし成果物としては、まずレイアウトがきれいで、何が言いたいかしっかり整理されていた。また、仮説→調査→検証という段階をきちっとこなせていた。指標を作り出すことができている班もあったので、この意識をみんなで共有した上で、制約を持った非空調空間を考えていけると良い。



この後、受講生とTAでパネルディスカッションを行いました。



敷地調査発表は、調査期間が1週間と短かったのにもかかわらず、非空調域リサーチからかなり進化していて期待を超えるものでした。
TAにとっても深く考えさせられる、すごく面白い発表でした。

ただ、全部の班が時間を守らなかったのは残念です。今回で言えば、時間を守っていれば中川様からの講評の時間を実際の2倍とることができました。
多少のトラブルにも動じないよう、しっかりと余裕を持ったタイムスケジュールを心がけてもらえればと思います。

次回からはいよいよ中国研修旅行に向けたリサーチが始まります。
このモチベーションを保ちながら、頑張っていきましょう!