北京弾丸研修ツアー&現地調査発表

前スタジオ中国研修旅行の3日目は前先生のご要望もあって、1日で北京がわかる弾丸ツアー。
万里の長城、鳥の巣、故宮、そして現地調査の発表と、この研修旅行でハードな日でした。

まずは朝7時に出発して、万里の長城にいきました。

万里の長城を前に完全防備?で臨む前先生

男坂(勾配の急な方)を登り、最終的にはヘトヘトになりながら登りました笑

続いて鳥の巣。
間近で見てみると、CGの画像のときの印象とは異なり、かなりの塊感でした。

昼食をはさんで次はリサーチの班に分かれて故宮へ。

皇帝の道はそれほど熱くなっておらず、温熱環境的にも優れていることがわかりました。

現地の3輪車にも乗り、ドヤ顔の講師中川さん。


この後、運転手にぼったくられました。。笑


さて、今回のメインであるリサーチの発表です。
今回はゲストとして、
前先生の同期の鏡さん、鎌田研究室出身の王さんがいらっしゃいました。


まずA班
北京の息遣いを読み解く環境×計画リサーチ
日本の敷地で行っていたリサーチの手法を拡張して適用。
プログラムや交通インフラ、人の居場所など、スケールの大きなものから小さいものまで順を追って、分析していきました。

プログラムはホテル・スーパー、市場・駐車場などをプロットし、観光客・地元住民それぞれの交通手段や訪れる場所が異なることを鑑みて、巨視的な観点からの場所の意味づけを行っていきました。

続いて人・車・公共交通のパス・ゲートをプロットし、パスによって大まかな流れ・分布を把握し、ゲートによって微視的な場所の性格づけを行っていきました。(ただ、個人的にはこの部分のリサーチが微視的と言えるリサーチの仕方なのか、うまく作用するのか不明瞭でした。)

日本の敷地でも行っていた風と日射のシミュレーション画像を重ね合わせ、都市の環境的なポテンシャルを解析する手法を北京にも適用していきました。

最後に現地調査を踏まえて、場所の性格付けとSET*をスケッチを用いて表現していきました。
結論として、道幅が広いところでは風が支配的、道幅が狭いところでは日射遮蔽が支配的という環境的なまとめをしていました。

講評 
高瀬さん
道幅が広いところでは風が支配的、道幅が狭いところでは日射遮蔽が支配的という分析は自身の体感とも合っていて、それを系統立てて説明できているのはよい。
MADの早野さんがおっしゃっていたが、マクロなスケールのものとミクロなスケールのものが共存するのが現代の中国であるというが、それを受けてどのような設計を行うべきか。

前先生
現状分析は充実しているが、それに対して何がしかの価値判断はないのか?
スケールを維持すべきか、もっと微細なスケールを導入すべきか、考察があったらよかった。
日本的なものと中国的なものの対比がもっとあるべきではないか。
スケールの共存の仕方が日本と中国で異なるはずで、その共存の仕方が類型立てて比較すべきではないか。

中川さん
マクロなスケールでのプログラムのプロットで何が分かった?
→観光客と地元住民で交通手段が異なる。プログラムプロットによって、どのあたりでどの交通手段が主に使われているかがわかるのではないか。(清野)

支配的なパラメータの議論として、緑の影響などを無視しているのではないか?
→値は実測値。(清野)

歩いていける都市というのは北京の1つの魅力でないか。
歩いていける都市を誘発するような建築をつくるべきである。

スケッチは主観を表現したものか?
→大きなスケールだけではなく、ディテールまで拾い上げようという意志。(清野)
→最終アウトプットの表は、既存の指標を疑うべきで、主観的な評価とも照らしあわせていくべき。その照らしあわせ、意図がスケッチから浮かび上がるはず。

スケッチという表現媒体の優位性は何なのか?
客観的、工学的な指標を元にフィードバックしながらやるべきではないか。


現地にいく前のリサーチは一番充実している印象ですが、それに対して、現地調査をうまく結び付けられていない印象でした。おそらくプレゼンの問題の部分が大きいのですが、結論に至るまでに現地調査の情報をもっと明示すべきだったでしょう。スケッチが講師陣の指摘にあった通り、表現として環境的なリサーチや現地のイメージから離れすぎて、その独自性をうまく工学的な指標や敷地に組み込んでプレゼンできればよかったのではないかと感じました。

続いてB班
場所のリズム/シークエンス
敷地の周囲における不可視な環境的リズム、シークエンスを可視化するというテーマでリサーチを行いました。
東西南北の大通りおよび、南西の裏道を敷地への主なシークエンスと考え、50mおきに温度、騒音、風、をそれぞれ計測しました。
同時に、各地点において、主観的な心地よさを評価したり、中国の方々へのアンケートを取ることで
重要な箇所をピックアップし、定量的データと照らし合わせていきました。
事前に敷地周辺の公共施設や商業施設緑の情報を調査。

各地点のパノラマ

各要素のパラメータの予想(主観)と結果(計測データ)の考察

風が車の動きによって影響されるというのは興味深い考察でした。

アンケートの分析も行いました。

ここからデザインへの展望も言語化していました。

講評
中川さん
環境をリズムとしてシークエンスを重ねあわせて
google earthによって事前に敷地を読み解いて、
温度に依存している方が多いのか、風に依存している方が多いのか?
→温度によるほうが多い?日射についてはあまり考えられていない。

前先生
日の当たりの強さには言及すべきではないか。
シークエンスといいながら、関係性が切れている。
シークエンスとして、暑い場所、涼しい場所を限定された条件での配置を論じるべき。
前後の関係、日なたから日陰とか、変化・相対的な差を論じる必要があるのではないか。
頭が焼けるという気づきから、全身の表面温度の推移をサーモグラフィでとるべきなのでは?
→シークエンスはひと通りなのか、という話に対してはどう思う?
まず、自分たちのシークエンスについて価値判断があって然るべき。
走行速度(歩行者の年齢)とシークエンスの関係を論じるとよいのではないか。

TA川島さん
シークエンスという出発から、リズムというアウトプットにいたった。
リズムはマクロなものからミクロなものから内包をしていて、可能性を感じる。
灼熱の空間、涼しい空間、みたいな対比的なものを作っていく、あるいは細かいムラをつくっていくという手法。


中川さんがご自身のレクチャーで言っていた通り、快適は行動を伴った概念であるので、このリズム・シークエンスで考察するということは非常に重要です。このプレゼンにおいては、現地調査からリズムをどのように分類するかというところまで到達できればよかったのではないでしょうか。例えばリズムという文字通り音楽に例えれば、拍子が違うのか、拍子が同じでも強拍と弱拍の取り方が違うのかとか、それは良し悪しを判断するのとは異なるものなので、結果的に新たな指標が抽出できるかもしれません。


最後にC班
北京の都市から読み解く都市環境を改善する方法

この班はシーンについて様々な要素を重ね合わせて評価を行うというアプローチを日本のリサーチでは行っていて、その延長で現地リサーチを行いました。

そして、都市の要素と快適性に関わる要素によるマトリックスを考えて、分析を行いました。

北京の典型的な場所を6つ選んで、その場所について主観的な評価と工学的な評価を行いました。

工学的な評価と主観的な評価で快適でないと感じられた場所について特に分析を行いました。
それぞれ、樹木・黄砂などの都市の要素、環境要素に分解。

考察として、環境要素と都市の要素を重ね合わせてパターンを導き出しました。


講評
中川さん
熱と風と黄砂というパラメータ、植物と水と都市区画というファクターを用いて考察するのはよい。
どのようなコードを導き出そうとしているのか。
空間を考えるためのマトリックスができれば構造化されるのではないか。
エコライザーのような手法で建築を操作することが可能になるのではないか。

時間軸の拡張は必要。時間軸を微分したものがシークエンス、シミュレーションによる拡張が全体の評価、アウトプットが成果物としてつくれるということなのではないか。

前先生
一番共感できたプレゼンだった。
1日の履歴;温度、風速、日射、地面温度のカーブ、推移まで拡張出来ればよい。厚みをもたせられる。
日射遮蔽を優先すると、通風が困難という、相反するようなパラメータなのではないかという仮説はよい。直接カタチにつながるのではないか。

王さん
ライフスタイルのようなものも議論できればよいのでないか。


日本でのリサーチのときは1つ1つのパラメータの分析が詰めきれていない印象でしたが、ある程度その部分は改善されたのではないでしょうか。時間的な制約もあって、今度は逆に統合されていない状態です。各々のリサーチは素案としてはよいので、今後に期待です。


最後に川島さんがインターン時代によく行っていたという川沿いの飲み屋にて打ち上げ。

ハードな一日で本当にお疲れ様でした。今後の設計に活かしてください!