設計案エスキス

茅野です。
本日の前スタジオは、設計案エスキスです。
中国での敷地調査を終え、個々人が自分に設計案について本格的に発動し始めました。

5/22の中間講評に向けて、5/17にその中間講評での発表者を投票により選抜します。したがって今回はその選挙でのプレゼンに向けた最終エスキスということもありいつもに増し緊張感のあるエスキスでした。

今回は、TA以外に川島範久様と前先生にエスキスをしていただきました。

簡単にですが、以下に各人の設計案と講師の方々のエスキスを簡単に載せさせていただきます。

田中さん


北千住の堤防付近を敷地として選定(シークエンスの調査の印象が良かった。

堤防は住宅街から河川に抜ける境界付近。主観的評価は中程度だが、堤防を介した劇的な視界的、環境的変化がありそこに注目した。
設計案としては外皮の変化により夏と冬に対応するものを考える。
川沿いは卓越風が固定的で夏は南から、冬は北から風が吹く。 
夏の風を受け入れ、冬は受け流すようなファサードを提案。

前先生
河川沿いの空気は気持ちいものか。湿気。堤防で水をふさぎつつ、風を受け入れるにはどうしたらよいか。
堤防を越えるときの気持ち良さを建築の内部に取り込む。
一瞬の快感を目指すのか、コンスタントな快適を目指すのか。
堤防論は散々やられている。
北千住の悪いイメージを払拭する必要がある。
土木を建築が飲み込むという発想は面白い。

川島様
氾濫を危惧するあまりに大きくなりすぎた堤防、河川敷が身近なものではなくなった。しかし最近ではまた津波対策として堤防の大きさが見直されてきている。
河川敷の話で完結するのではなく、その建築が住宅街の人にとってどういう意味をもつかが重要。
街づくりの観点と河川沿いの開発を結びつける。
そこに住む人や町のイメージが表れないと着地しない。

米澤君


既存の箱型の建築は3面に日射が当たる。建築の形状が球状なら半分は日影になる。
球から始めて敷地に対応させて球の形状を変化させていく。風を意識して一部の壁を外すなど。
同じ形状でも敷地条件によりそのディテールが変化していく。球の合体。水流による球の回転など。を考えている。

川島様
スタートとしてはいい。原理的に建築の形態を突き詰めたフラーの案を彷彿させる。
外皮が太陽に追尾して動く。フラーの原理的な案をチェック。
フラーは砂漠の上にやった。
サステナブルアーキテクチャ日建設計) 海宝さん 光ダクトによる光環境の最適化などを参照。

前先生
日射を考える球ならば軸を傾けた方がいいのでは。球が複数個あるパターンは必要ない。
風はおまけ。
地球の偏西風などの現象を体現したバイオスフィア的なものを作っては。

藤間君



敷地は品川。オフィスの均質な空間とむらのある空間を合わせたらおもしろいのではないか。
データセンタの排熱が大きい(卒論で扱ったテーマ)
デスクトップの本体だけを建築下辺に集中配置。建物の熱源として利用。
もう一つのテーマとしては一日と一年で様相が変わっていく建築をつくりたい。内部空間における熱の移動に変化をもたせるなど。

前先生
昔から均質な空間が悪いという案は良く出ている。
空気を駆動できるほどの熱が発生しているのか。
オフィスの上に住宅なんかの案は面白いのでは。オフィスと住宅の人口の密度が異なるため内部発熱のむらを利用できる。

川島様
内部発熱を使う案は面白い。
S不動産 オフィスの背後に住宅をおいてオフィスの排熱を住宅に使う。
Tガスコンペ オフィスの上にジャングル。環境的な面以外にも、都市の中にジャングルが生まれることにインパクトがあった。

児玉君



敷地は品川。
非空調空間を考えるときに、ヒートポンプの排熱が引き起こすヒートアイランドの問題を解決するプロトタイプの提案。
排熱を蓄熱して夜間に放射する。
ファサードに蓄熱材を付設することで熱を可視化したい。(潜熱蓄熱材)
北京の卓越風が自動車によるものだったことを利用したい。
オフィス群なので熱帯夜などの問題を助長することへの影響は考えなくていいのではないのか。

前先生
蓄冷の話に似ている。
夜間の放射を促すような形態はどう考えたらよいか(児玉)→無電化冷蔵庫の放射の原理をチェック。
排熱のオーダー計算をした方がいい。
放熱にも対流、放射の違いを反映した形を考えると面白いのでは。

川島様
河川に排熱する場合は生態系への影響を考えなくてはならない。
単体のビルでやるのは限界がある。都市の中での位置が重要になる。都市スケールの展開にする必要がある。
機能ゾーニングを逆に利用した案。←夜間の放熱を是とすることに関して。

清野君




敷地は品川の運河。川の周りの卓越風向が安定していることに注目。
河川沿いのプログラムは工場から、オフィスや住宅地に変わったが結局今でも、それらが川に対して背を向けている。
工場があったころの無機質な空間が今でも残ってしまっていることに気づいた。
最近運河沿いの再開発の重点地域として見直されている敷地周辺。運河の半分の幅員を残せば運河の両端を開発してもいい。(条例)
屋根や壁の形状、素材の変化と日射の角度、風向の変化を組み合わせた建築をつくる。(詳しくはコンセプトドローイング参照)

川島様
プログラムに意味を持たせないと意味がない。
周辺の住宅やオフィスとの関係性を見いだせないと案として厳しい。

前先生
川を埋め尽くしてしまう感じがでると弱い。
繊細かつ控え目な案であることが重要。デザイン力問われる。

石綿さん



品川芝浦水再生センターの低密度感に着目。気化熱の利用。
現在ここはソニーシティに対し水を送っている。
街全体に対し機能する建築を提案したい。
プログラムとしてはオリンピックセンターのように外国人を呼び込む。水を送っている企業のPR館など。
現状の貯水槽には人工地盤により蓋がされている。人工地盤は魅力的な場所になっている。
人工地盤の一部から貯水槽のあるレベルに入り込めるような構造にする。

川島様
ソニーシティの本社のビルはダブルスキンで換気ができるが、外気が臭くて閉めている。バクテリアの処理をしているため。
社会問題を解決できるようにするとおもしろい。

前先生
プログラムや考え方は面白いが形につながるかは難しい。
ネガティブな場所であることを強調した方がよい。
臭気の分解は形にはつながらない可能性がある。

林君




敷地は北京。
自転車で移動していた頃の北京を取り戻そう。
プログラムとしては公共レンタサイクルの駐車スポット

地下にアリーナを埋めて、地上に公園をつくる。地下空間を非空調空間にする。

前先生
中国において見えない建築をつくるという意味で地下空間を計画するのは面白い。
プログラムが駐車場というのが残念。
地面の穴の開き方に四合院など中国の特徴を生かすべき。
敷地の大きさのインパクトを生かすべき。
自転車の拠点としてだけでは意味がない。

川島様
自転車の駐輪場をつくることが、自転車の利用を増やすことにはつながらない。
都市計画の中で自転車問題は論じないと意味がない。
敷地だけで議論できることではない。

小原君




敷地は品川。熱環境への日射の影響が大きいことに着目。
建築の操作とリンクする影。1つの建築の影が、隣の建築物の壁面にうつるのか、水平面にできるのか。
一瞬の影ではなく、積算したときの影により敷地を分析した。
地面を隆起させ多様な影を作り出す。

前先生
無空調空間にはつながるのか。
夏と冬で違う現象が起こるのか。
影のでき方はヒントにはなるが非空調空間に直接的にはつながらない。

川島様
公開空地について考えるという案はいい。
建物への日射の当たり方が問題なのか、影のでき方が問題なのか。
敷地周辺に建物が立った背景を調査する必要がある。

吉富君



プラグインストリート
バッファ空間(完全無空調空間)をつくる。
商店街のアーケード
アーケードの屋根につたを這わせ日射遮蔽と蒸散を合わせた涼しい空間をつくる。
その次の段階として、商店自体も熱が抜けやすいような形態にリノベしていく。

川島様
最適なアーケードという提案だったら面白い。
既存においていい案であるとともに、建て替えにともなってもいい案である必要がある。

前先生
どのパラメータをいじってシミュレーションをするのかが見えない。

松田君




自然と連続したような建築。超高層。上下におけるむらが大きくなる。
スラブで区切って、どの階も均質な空間にすることにエネルギーを費やしていることへのアンチテーぜ。
超高層ならではの温度むらを生かしたものを提案できないか。

前先生
超高層と風の関係を体現された形を具現化したものが面白いのでは。
プログラムは後回し。

川島様
超高層で通風をやる上で、ちゃんとコントロールできないと風圧差によりガラスが割れてしまう。
形の操作により風圧をコントロールできると面白い。
原広司さんのトロントの超高層の案参照。
アンチがあるとよい。近くのオフィスビルなど。
JAオフィスアーバニズムを読んで均質なオフィス空間が生まれた背景を勉強する。
オフィスブック(オフィスの歴史)

西倉君



敷地は成城。
塀に囲まれた周辺の住宅の間にTABLEを設けるとどうなるか。
地下にSOHOや社宅などのプログラムを埋める。1FのレベルにはTABLEを配置、その上を覆うように線で構成された屋根を配置する。
成城の土地にパークシステム(都市の中央に公園を設けることで周辺の地価を上げる)を導入する。
屋根をすり鉢状にすることで、敷地に流れる風を導き緩やかに流す。
敷地に対して、ボリュームをどのように配置するか(中央に分散させるか、敷地中央に道のようなものを設けるか)をスタディー中。

川島様
案として面白い。
きっかけとなったダイアグラムとスケール感と実際のスケールが乖離している気がする。


北潟君



敷地は最終的に4つやりたい。
環境的に快適だが計画的に生かされていない部分に着目して、新たな道を計画する。
出来るだけそのスポットには最小限の操作で快適な空間を作りたい。
そのポイントのポテンシャルを最大限生かすものをつくる。
日射が当たる場所ならその日射を最大限取り入れる。風が抜けるところならその風を最大限取り入れるなど。

前先生
プログラムは必要ないのでは。
オープンカーでも空調が効く(冷気が留まる)ことなどから考えると、本当にわずかな壁の操作で流体を留めることができるのではないか。
日射や風が積算による分析だが、一瞬の快適性にがどうなるかも気になる。

川島様
そこの環境を体感できる(そこの快適性に気づくことが出来る)半屋外空間をつくることに特化した方がよい。


紺野さん




木陰の気持ちよさに着目。
ただ木を植えるだけでは建築ではない。メンテナンスや落ち葉の掃除など、実際の問題は多数ある。

木陰を建築で体現できないか。
フラクタルな形をまず考えた。
時間によって落ちる影の形、密度が変化する携帯により木陰を再現する。

敷地は成城。バス停のロータリーを敷地に選定。


川島様
スタディーの量が重要。屋根の提案でとどまってはいけない。
建築が他の建築に及ぼす影響の一つとして風があるという認識が大事。
屋根のような建築、拠所になる建築がつくれる。

富山君

地下空間に着目。既存のプランニングにおいて地冷設備などに使用されていない部分を敷地として選定。
地上の公開空地とつながりを持たせたい。
地下の空間は普通機械換気。自然換気でできないか。

川島様
品川では地下は車のためにつくられている。その背景があったうえで地下に対する問題をどう設定するか。
富山君の思っている疑問を一層上げて歩行者のレベルに置き換えればいい。

前先生
品川の地下に人を通すのはどうか。
環境的な面以外に、都市計画としての意味をまず把握するべき。

王さん



環境と歴史を結び付けたい。
風土、思想、歴史文脈(横軸)と環境要素(縦軸)によるチャートを作成。中国の歴史、風土と環境要素の組み合わせにより建築に必要な要素を探っていった。
環境的な要素としての樹木を風水と結び付けてその配置を決定するなど。
巨大な敷地に対して論理的に建築の構成を考えていく。
これから都市とともに発展していく建築を考えたい。
黄砂の問題については敷地に呼び込み、建築により浄化するシステムを組みたい。

川島様
形は環境やコンテクストにより決定して、マテリアルに中国の歴史などを反映させていくとよい。
歴史はディテール。

前先生
環境と歴史の関係から導き出された構成要素間のつながりが見えないが、案としては良い。