講師分散エスキス

本日は末光先生によるレクチャーの後、末光様、中川様、羽鳥様によるエスキスを行いました。

末光先生のレクチャーの内容に関しましては、別記事をご参考ください。

以下に本日のエスキスの内容を載せます。


紺野さん
駅ビルのプログラムを「抜ける」「留まる」「居る」に分け、そこに環境的なむらをつくろうとして、環境的なむらと上記3項目の組み合わせがわからなくなっている。細かいボリュームを分散配置し、様々なスケール感の空間をつくる。「居る」は極端な環境、「留まる」は微気候のデザイン、「居る」は空調空間のイメージ。敷地の南北で全く異なる特徴をもつ街をグラデーショナルなものにしたい。





単純に駅ビルをつくるのではなく、駅前をつくるという発想が大事。現状、同じ建築言語で空間を埋めようとしているが、もっと多くの言語を使うか、もしくは同じ言語でスケールを場所によって変えてやるといい。グラデーショナルな変化を与えてやるときは周辺環境に呼応させ、断片的に自分の作りたい居場所や動線を設計していって敷地全体を埋める。
もやもやと考えていることがあるのであれば模型の上にどんどん書き込んでいったり模型を作って行ったりするとよい。河のデザインと考え、どのようなところに魚が住むかを考える。


西倉君
質量のデザインを応用した、高層戸建住宅(一部テナント)。
高層にし、その中に住宅に要素を鉛直方向に配置していく。上層の方は、プライバシーを担保させつつ外部にひらけたものになる。構造は木、コンクリ、鉄のフレームにより構成され、その中にまたフレーム状のボリュームが組み合わされる。




住宅をギュッと伸ばして高層の住宅にしているのに、フレーム状の形態に落ち着いてしまっているのがもったいない。密だった木のテクスチャがギュッと伸ばされて疎な物質(光や水を通す)とかルーバーなどに変化する方が面白いのではないか。単純にフレームに対してガラスを張るということに落ち着いてしまうのはつまらない。もっと中間前のような点で構成される形態の方がいいのではないか。
日影の問題により規定される高さ制限に対し、建物をすかすかにしたら、こんなに魅力的な都市ができるということを言わなくてはならない。そのために、すかすかにすると良い効果が生まれるという部分的なシミュレーションで示す。

今の案ではグラデーションが段階的になってしまっている。グラデーションを生かすには、ある程度のスケールが必要なのではないか。色々な場所ができ、それらの関係性をデザインするということ。集住であれば、場所は品川の都市部や北千住の学生街でも良いのではないか。シミュレーションにおいては、うまく抽象化することを考えることが大事である。また、この案は手書きによるひずみの感じがすごく良かったので、それを生かしながら自分の世界観をしっかり示すことに力をかけてほしい。


富山君
四合院を積層させた形態により環境的なむらをつくり、四合院の良さ(中庭を違う階層の人たちが共有する、中庭を開けることで日射がそこに入り込む)を保ちながらも、3次元的な良さをもつ集合体をつくる。


積層が2,3層程度でいいのか。建築を持ち上げて影をつくるのは建築のモチベーションとしては微妙。社会の何に接続しようとしているのかがわからない。高層住宅へのカウンタープロポーザルとして提案するなら、集合住宅と同じ密度で、四合院にすることでこんなにいいことがあるんだということを示せないといけない。
もっと使い方がわかる程度のスケールの模型をつくる。
シミュレーションとか環境とか忘れて、どのようなつながりどのような空間が欲しいのかを軸に建築を作っていく必要がある。


石綿さん
品川の下水処理場を何とかして街に開いて行きたいという案。水の放射を使うために水を吸い上げる棒を刺すという案は、水の中でモーターが回っていて棒を刺すことができなそう。煙突をつけてめくり上げた穴に負圧をかけ臭気を抑える案は、ちゃんと計算ができていない。この敷地を最初に選んだきっかけは、都心にものすごく広い場所があって、その下にものすごい量の水があるという状態を、何かに使いたいと思ったということ。



今大量の水があり、その冷たい状態を利用したいという話。一番やりたいことは、水を使って周辺環境をよくしたいということ。そのために何が作りたいのか、建築なのか公園なのかがぶれている。例えば、匂いの問題が解決済だとしたら、ここにどんな建築が作りたかったのか。匂いをとる方法として塔を使うのは正解だと思うから、自分自身がやりたい根源的なビジョンが塔と擦り寄って建築となっていくのではないか。前スタジオの課題では、環境的な問題がもし全くない時に、自分は一体何がしたいのかという視点も重要である。めくりあげられた穴と、臭気を吸い出す塔がある。そこを自分自身のこころとしてどういう場所にしたいか拾い出してあげる作業をしなさい。


林君
ヤオトンの形成のルールを抽出した。第一に、グリッドのルール。最初に地割をしたために秩序を持って広がっていった。第二に動線の確保。ここで風から身を守るという最初の動機と、風が吹き込むが絶対必要な動線というもののせめぎ合いが起こる。第三に拡張性。世帯が増えるにつれて拡張することを見据えながら空間を作っていくこと。
北京の敷地において、地上からは光を導入し、地下からは地下鉄の動きによる風を導入し、その間に良い地下空間作ることをする。地下鉄の風については論文を参照して調査し、最大瞬間で20m/sの風が起こることを確認した。地下鉄北側に、あるグリッドに基づいた彫り込みを作っていく。地下鉄を使う人は風を感じながら光を求めて地上に登っていく。



考え方は良い。種をどう育てるかという話であるが、種の中の遺伝子について林君既に掴んでいて、どういうふうに水をあげて美しい花を育てるかという段階に来ている。地下鉄自体の在り方・空間を変えないで、地上と地下鉄の間にある場所が変質していくというやり方が良い。ヤオトンと地下鉄の風を結びつけたのが林君最大のオリジナリティ。グリッドについてはその地のもともとの地割を尊重するのが良いのではないか。グリッド、動線、拡張性という3つのゲーム設定にちゃんとした意味付けがあると強い。あと、林君の作る地下の空間でどのようなシーンが起こるかの断面パースを描くと良い。美しい花を咲かせなさい。


兒玉君
北千住の集密繁華街に無電化冷蔵庫の原理を用いた「きのこ」を突き刺して、非空調にすることで路地空間の在り方を変える案。敷地の現状の路地裏空間を利用可能ゾーンと利用不可能ゾーンに分類し、利用不可能ゾーンにきのこを突き刺した。敷地の真ん中の古い住居は取り壊して広場にする。今回は敷地の一分の部分に対する設計をした。飲み屋がふちでつながって、縁側のようにつながっていく。プログラムを開いていくという話であるが、キャバクラのような場所は開かない方が良いのではと考えている。




キャバクラは閉じといた方がよい。閉じている部分と開いている部分が共存するような表現ができると良い。非空調になることによって建築の形式が外に開くという話をするためには、路地裏のきのこが刺さる部分のディテールが重要になってくる。現時点ではこのきのこの形状のスタディが足りないし、多分兒玉君自身こういう形状に対して、これが良いなと思えるようなインスピレーションがないのだろう。直感的にかっこ良いと思えるものであって欲しい。そしてそれが断面パースに建築の良さとともに表現されることが、最終成果物のイメージ。


吉冨君
商店街の断面形式を見直し、建物の裏側と表側の空気が、ツタのからまるフェンスを通して循環することによって非空調領域ができあがる案。冷熱体、ウィンドキャッチャー、屋根形状を変えることにより、風が狙い通りに循環するようになる。ツタの絡まるフェンスの設計は、もともとの商店街にある庇とか看板とかベンチとかから派生させたい。





シミュレーションに時間を使いすぎてしまった感があるので、シミュレーションは現状でもう固定して良い。この案は非空調であることによって建築空間が外に開いていくようなイメージを繊細に表現するのが大事。自分の設計するシステムが全ての店において完璧であるということを追い求め無くて良い。完璧でないところに豊かさが生まれる。最終堤出物において繊細に表現できるかの勝負でもある。植物利用のボキャブラリーが足りないので、画像検索で良さ気なものを探すとか、ナチュラル系の雑誌を見るとか、インプットを増やすのが良い。子規庵とかにいくと良い感じにツタが生えているかもしれない。これまで繊細にリサーチを繰り返してきのだから、それが図面に落ちてくると良い。パースでなくて、展開図や平面図などの長い図面に現れると良い。

米澤君
中国全土に、直径500mの巨大な球体のシェルターを配置する。今は500mの球には100人しか住むことできなくて、面積が足りなくて悩んでいる。



100人が少ないのかという話の裏付けとして地域社会圏の話があるが、結局外部に依存しているだけで本質的に小さいわけではない。この案は本当に人間100人住むためには巨大な球が必要だということを伝える案ではないか?そのいつも人々が意識せずに消費している膨大なエネルギーが建築で表現できるような気がする。世界に展開しても良い。アメリカ人は常に空調が必要かもしれないし、牛が大量に必要かもしれない。そうすると球の大きさが変わってくる。
スタートが球であったということは、最初から思考実験のような方向に傾いていたということだと思う。球体を普通の建築に落とし込もうとすると、それは面白くない。なぜ球なのかというメッセージ性を大事にして欲しい。設計される形には必ずエネルギー問題が表されるべき。普通は建築に落とし込もうとするけど、自分は違う形で表すという意志を意貫いて欲しい。建築の内部の形は、空気の量とか、水の量とか物理現象だけにしっかり向きあい、建築として破綻していても良いから球の中に当てはめてみる作業をして欲しい。


藤間君
品川の田町車両センター再開発地区に外資系企業向けのノマドオフィスビルを設計する。多様な気候区分を作り出すことで、生産性だけでなく創造性、コミュニケーションを生む空間を目指す。様々なボリュームにおける温熱環境の基礎的なスタディを行った。それらにサーバーの排熱を組み合わせるなどの操作を行うことにより、ジャングルやバー、足湯などの場を創出する。

まず普通のものでは何が悪く、どう良くなっていくのかを絵で示すこと。生産性を落とさない環境工学はあるが、創造性を豊かにする環境工学はない。この案では創造性を豊かにすることは気候の差を生み出すことと仮説を立てている。また、固有解となるものなので、入る企業も決めた方が良い。使うシステムも、風が強いときは働きませんなどノマドならではのものでも良いはずである。また、プランは普通の部分と特殊な部分で区別をはっきりさせた方が良い。残りの時間から絵の見せ方とストーリーの組み立てを逆算して案を作る。



小原君
北京に美術館を設計する。中国の美術館は国の威厳としてあるものだが、ここに公園・胡同の使われ方の多様さを利用していきたい。全体的に美術館の風潮として脱ホワイトキューブが一つあげられるが、温熱環境的な要素も加えていくことを考える。また、周りと隔絶することで独特な世界を作り上げているものが多い中、この敷地のような都会の中では、周囲の環境に呼応してにごるようなものであっても良いのではないかと考えている。



傾斜させて特殊な環境をつくると言ったとき、この環境や形状をどう利用するのかを考えるべきである。今のアーティストにどう使うかを委ねるという設定は無責任にも思え、自分で具体的に設定することが必要なのではないか。例えば、中国の代表的な都市全ての環境をこの建築で作り出すとか。北京が権威の象徴と捉えると合っているのではないか。どうするにしろ、北京に美術館があることの自分なりの解釈を。そして基本的に自分の主観でボリュームを設定し、スタディをどんどんしていくべきである。スラブは絶対にいらないと思う。


清野君
オフィスを軸に、商店・動線がらせん状に巻き付くようなものを考える。外側はスキンの重ね合わせによってできていて、ボイドを要所要所に空けながら、商店の半屋外空間を展開させていく。以前は駅から川へ視線が抜けることを重視していたが、ぱっと見えるものでなく、らせんを上がっていくといつのまにか川に出るというような体験を考えている。



模型は固い印象があるが、レイヤーがひらひらとしていて完結していないような、もっとおぼろげなものになるのではないか。外観はスラブ勝ちで、周囲の環境に呼応しながら、レイヤーに奥行があるようなイメージ。真面目に計画してはダメで、右脳で模型を作ってみるべきである。らせん状に巻きつく商店は、風や光、周辺環境などによって、それぞれの場所ならではの使われ方まで表現できるように。そして早くシステムまで踏み込んで考えていった方が良い。冷熱源は川からとる、など。


北潟君
車の排気ガスに使う土壌浄化システムを食肉工場に適用する。工場に全体的に山をかけ、土の組み物を積層させた分厚い層を天井につくる。それにより暖かい臭気が上昇し、徐々に浄化されて外部に出ていく。外部表面にはお花畑やBBQなど、良い匂い系のプログラムを持ってくることにより、わずかな匂いをさらに緩和させる。



構造は組みレンガを参考にしてみては。水の処理は内部で集めるのは無理がありそうなので、外表面の山のふもとを流れていくようにするとか。自分でも自覚できているが、内部環境をどうするかがこれからの課題である。フィルタリングを行いながら、緑のシートですべて覆うのではなく、たまにガラスにして光を通すことも考えてみては。また、矩計図まで書けると良い。絵がすごくきれいなので、手書き中心のパネルにすると良いのではないか。


王さん
砂を飲み込む建築。溜まった砂に生やす植物は環境的・歴史的理由からトクサを使おうと考えている。アメーバのような外形形状・谷間・うろこのシミュレーションをしているが、その中でサンドキャッチャーはサンゴのような形状がベストだということが分かった。この形と都市軸から決めるプログラムを重ねていく。




今のところ、形とプログラムの話が全く関係ないのが問題である。美術品はものによってどういう環境が良いか違うはずである。用途をはめこみ形が決定していくか、もしくはその逆か、2通りあるが、どちらにしても形が内部環境にちゃんと寄与するようなものでなければいけない。とにかく今の案でシミュレーションを行い想定通りの結果になるか試すことが第一。プレゼンでは砂と建築のポジティブな関係性をしっかり示すこと。それには何より魅力的な絵を描くことである。


いよいよスタジオも残るところ3週間を切りました。
案をころころ変えていた人はそろそろ見切りをつけ、現状案を深めていってください。

ではまた来週。

末光先生レクチャー

本日は末光先生にレクチャーをしていただきました。

自然体の建築

震災を契機に自然と人がどのように付き合っていくべきか考えている。

自然体の建築とは、
1、自然の秩序に従う美しさを持つ建築  Form
2、自然の中にいるような快適性を持つ建築  Comfort
3、自然の循環系の一部となるシステムを持つ建築  Eco System

BIOMMICRY = 「バイオ(Bio)」+ 「ミミクリー(Mimicry)」生物+模倣
自然の形状を参照しながら工業などに利用していく分野
メタファーとしての自然から、テクノロジーとしての自然へ
アールヌーヴォーなどの単なる形態の模倣ではなく、そこに潜む秩序・合理性を見据えるデザインを標榜する。


以下、実作をご紹介いただきながら、自然体の建築、テクノロジーとしての自然についてご説明いただきました。


Kokage
影をデザインする

末光先生の同級生のご実家
老後、リタイアした後の生活

木陰はなぜ快適なのか おおきく3つの効果があると考えた。
日射遮蔽
照返しの防止
蒸散効果

10個の木陰ユニット
いろんな場所をつくる

大きな屋根をつくると真ん中に大きな影ができる
小さな屋根をつくり、トップライトをとりながら全体的に明るい空間をつくる

輻射冷房ユニット
夜は間接照明になる

自然の秩序に則りながら、いろんな場所をつくることを考えた。



地中の棲処
地中の快適性

地形の立体測量 正確に敷地形状を読み込むことで、場所の性格付けをおこなう

地中温度をしらべる 5mくらい掘ると、夏冬の温度は5℃くらいしか変わらない

地盤・地質の調査 想定地層図 2〜3m下に岩盤層があることがわかり、そこに基礎を着地するようなものを考えた。

地中の階段、1つの風の通り道として利用。クールチューブを建築化したようなイメージ

すぐ外に出れるように、室内は基本的に土足、土間にしている。

部屋によって高さが違う。プライバシーや机の高さなどを反映した。


葉陰の段床
間接光に満たされた場

ライトシェルフを建築化する?スキップフロアなど

葉っぱの蒸散作用を利用する

雨水を利用する灌水システム

ルーバーの配列
柱の鉄骨にたいして、つき方が3種類
下のパネルに対して影が最小限になるように設計

有機的な配列の方がある意味では合理的
パネル、ルーバーは水を含むだけで6度くらい下がる。


嬉野市社会文化体育館 塩田中学校
風景と向き合う幾何学

コンテクスト1
伝建の風景 佐賀の山並み 

コンテクスト2
水害対策 海抜が低い 河湊して栄えた場所
20年に1回洪水がおこる

高床のネットワークをつくる ランドスケープマスタープラン
周辺施設への接続 公園の園路との接続
避難経路となる

洪水時の貯水池 地域のパブリックスペース

折れ屋根がつながっている建築をつくる

二重性を持つような幾何学
家型をY型にする

フラクタルな形状
XXSからXLまで 機能が変わっていく ベンチから体育館まで

雨水をY型で集めて、中庭に散水する。中学校というなかなか冷房を入れられないところで涼しい風をおくってやろうとした。

音と折り紙の形状の関係
アンズスタジオ 特殊なプログラミングをしてくれる事務所
音響解析プログラム 永田音響
4次元 幾何音響シミュレーション 反射音のシミュレーションまで行う
初期の反射音ができるだけ均質になるかがいい音響ホールかのポイント
折り紙形状を形成するプログラムと音響プログラムでフィードバックし合う

ミウラ折り

形態生成と音響シミュレーションが連成している例は世界ではほとんどない

ハザードマップ 逃げ地図に倣ってやってみた。
Phase1 橋を通じて北側高台に避難
Phase2 市役所・アリーナで洪水が引くまで
中庭に貯水する



東京理科大
末光スタジオ
タワーマンションオルタナティブデザイン
環境と経済を考える

通常ならタワーマンションが建つところを多孔質の形状の建築を考えることで、ある程度低層に抑えた建築を考えていった。



質疑

小泉君
テクノロジーという言葉の意味について。科学的な原理として、形態生成のための原理としてなのか。
両方のことを意味している。

メタファーとテクノロジーの線引き
メタファーは恣意性を帯びるリスク。ポストモダンみたいになる。
テクノロジー、自然界が形成している有機的な原理を引き受けている

羽鳥さん
末光さんとは共感しかない。
ロジカルに説明できているようで、必ずしも環境解析からするとベストじゃない。
環境工学的な説明をしなくても素敵な建築。
さらに環境工学的な説明をするからさらに素敵。
どこを始まりにして、どこを終わりにするかはセンスのたまもの。

普通の設計で満たしていないと、環境の設計としていいものを作っても意味がない。
遺伝子レベルでデザインされていること、その後にどのように育てるかというデザインがある。
その後者のツールとして環境を利用している。

環境建築として言っている限り、主流ではない。カウンターカルチャーでしかない。
直観的に気持ちいいということを感じることができる人材を育てないと、主流にならない。
論理的な説明を要さないと素敵な建築にならないとはいけないのは建築としてはだめ。

理科大の課題において、
ヴォリュームスタディレベルで環境的な新しいパラメータを組み込んでスタディするということで、スタンダードとして環境を学んでいくのではないかという期待はある。

中川さん
仙台メディアテークのときは佐々木さんがリードしていて、構造が主要なパラメータだった。
伊東さんのイメージとしては、チューブの形状が光を求めて上に広がったりしているものもあったが、
イメージに留まった。環境がいまひとつ空間を決める決定的な要因になりきれていないのはなぜか。

一番大きな理由は、空間的なことを語れる設備エンジニアがいないこと。構造設計者と違って、目に見えないものを扱っていること、機械を用いていることで、リスクを取ってしまう。
自分自身(末光先生)は段々外の話をしようとしている。未開拓の領域、プリミティブな世界に踏み込む。

原研哉さんに環境建築と言えばなんですかと言われて、ぱっと言えなかった。
構造と違って、スカイツリーみたいなわかりやすいものがない。
環境という分野は、ぼんやりしている
評価の仕方も変わっていいのではないか。利用者全員にアンケートとか。

環境建築は、体調や天気によって全然印象が違う。
写真で見るのと、体験するのは全然違うということを九州の建築ツアーでいわれた。

西倉君
設計する際に、ツールが先行するのか、網羅的にやってツールを選ぶのか?

網羅的にやってもダメで、敷地を見に行った際の第一印象は重要で、
とんがった部分をいかに建築にとりこんでいくか。


末光先生貴重なお話をありがとうございました!
羽鳥さんや西倉君の質疑にあったように、ただ網羅的にいろんな要素をドライブさせるのではなく、
重要な要素を拾い上げてデザインするそのバランス感覚がなかなか真似できないものだなと思いました。

TA分散エスキス

今日はTA(高瀬、川島、茅野、草川、中川、中島)によるエスキスを行いました。
設計の進め方やシミュレーション、CADの使い方など、各TAと相談しながら進めて行きました。


普段は各受講生の現状案と改善案をTAが書いていましたが、今回は受講生に記入してもらいました。

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藤間久秀

・現状案
場所は品川の田町車両センター再開発地区。
オフィスビル内に多様な気候区分を作り出すことで、生産性だけでなく創造性、コミュニケーションを生む空間を目指す。
ひとつの手法としてデスクPCを集中配置しサーバールームを置くことで、クラウド化によるフリーアドレスか、廃熱を利用したジャングル、温泉といった場所の提供がある。

・改善案
ベーシックな空間に対し、高さ・幅・窓位置などをパラメータとしたタイポロジーを行う。
これらの要素をデザイン言語として積み重ねていく。
まずは吹抜け3層程度の中での移動・アクティビティをスタディする。




西倉美祝

・現状案
成城の住宅地に、住宅(一戸)+外部へのオープンスペースを内包するタワー型の建築。
ソリッドな建物ではなく、線によって分解された建物を構想することで、塀+閉鎖的な住戸という成城の構成をパラダイムシフトさせる。

・改善案
模型を製作。できればスケッチアップのモデルも。
雨仕舞の構成の仕方。
成城にタワーを作るということの妥当性。
それを可能にするストーリーの強化プレゼンパネルの構成。




紺野光

・現状案
敷地の風の吹かない場所にボリュームを配置。
それによって生まれた多様な空間に、人の行動(抜ける、とどまる、いる)をイメージしたプログラムを配置していく。
周りに広がる駅ビルに。

・改善案
敷地周辺のプログラム分析、動線計画からのボリュームスタディ




小原克哉

・現状案
北京で美術館というプログラムについて考える。
文明に関わるプログラムを考える際、文化大革命をどのようにとらえるかの意思表明が必須なのではないか?
北京に於ける美術館(博物館)の配置状況を見ると、庶民への文化というよりも権威、威厳を誇るためという印象が強い。
創作の場、公園的役割も付随した気軽に文化に触れられる場所を作りたい。

・改善案
MADは山水画、隋建国の人民服を建築の文化的テーマとしている。これらを深く調べる。
山水画、庭園のようにすべてを決めきらないところに中国美術の美がある。
鑑賞の仕方も環境を整えきらない良さをアピールできるのではないか。木曜のエスキスまでに模型を作る。




児玉和生

・現状案
内容は以前と同様だが、案をはじめから考え直した。
詳細な敷地調査を重ね、既存→改修のプランを描いた。
無電化冷蔵庫は建物の隙間のデッドスペースに入れることにした。

・改善案
境界条件と屋根形状をFlowDesignerを使ってスタディする。
模型を作る。




米澤星矢

・現状案
今日は主にスラブの配置について考えました。太陽の動きに合わせた動線を作ることで、旧内のエネルギー消費を小さくすることができると思います。
ただここには書ききれないほどの矛盾が一つ考えるごとに生じてしまい大変です。
牛は無理なので鶏にします。森は杉ですが、花粉問題は無視してよいでしょうか。

・改善案
もうそろそろ楽しむことをやめて矛盾を一つ一つ解いていく。
スラブを配置したシミュレーションを試験的に回してみる。
模型について考え始める。




北潟寛史

・現状案
食肉工場の臭気問題を解決する。土壌のもつ浄化作用(具体的にはアンモニアを硝酸塩に分解し肥料に硫化物を参加して、植物に吸収させる)を利用して、土の屋根を作る。
土壌による浄化槽の表面積を増やすため、屋根は土ブロックによる組物のよう構造とする。内部はこうじょうの 排熱や、土の断熱性能により、一部非空調とする。

・改善案
1)必要なプログラム、動線から1階平面を描く
2)山の起伏、配置のスタディを行う。
3)要な土の量/表面積を調べる。
4)模型つくる




オウキ

・現状案
1)シミュレーションの分析のし方。汚染物の結果が出てきませんでした。
2)MayaとRhinoでモデルのし方がわかりませんでした。

・改善案
シミュレーション汚染物解決しました。
Maya、Rhinoのやりかたを教えてもらいました。
1)木曜まではシミュレーション案を出す。
2)プランをCADでまとめる。
3)断面図を描く




石綿麻矢

・現状案
現在利用できていない下水処理施設の「水面」のもつ効果を利用するために、
? 槽の蓋を外し、人工地盤にあけた穴から水面を開放する。
? ?だけでは臭気の問題があるので、煙突をたてて臭気を逃す。(?の穴が負圧になり、臭気はもれない)
その煙突が下水処理施設の機構とリンクしたものを考える。

・改善案
1)そもそも穴をあけた程度で気化熱は期待できないのでは?→煙突だけでなく場所によって機構を変える。
2)もっと施設の仕組みが分かるような模型を作る。
3)必要とされるプログラムを考える。




富山創樹

・現状案
今北京に立つ建築は、富を持つ層の権力地位を誇示する手段として、エネルギーによって人工的な快適さを作り出すことに終始している。
そこで、四合院を参照し歴史的建築の持つ豊かさを評価していくことで、現代的な豊かさの指標により幅を持たせ、また万人が共にいられる建築を考える。
具体的な操作としては、四合院の形式、特に院子(中庭的空間)が持つ、環境的空間的メリットを生かし、院子を三次元的につなげていくことで、
環境のムラが生じる非空調領域として、また周囲との距離感を保つ緩衝領域として、空間が生成されていく。

・改善案
四合院の形式を積層させることによって、平面的な広がりでは生じ得なかったメリットを整理する。
例えば、平面ではデメリットとなっていた通風問題が、積層によって解決する。
基本単位の重ね合わせのパターンをスタディし、取り得る操作手法としてまとめる。
配置だけでなく、スケールも変えるとよい。全体の配置、プログラムも考えておく。
生成されるムラを生かすならば住居は考えられるし、オフィス・商店などのゾーニングで敷地を割ってもいい。

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設計の進め方自体に悩んでいる人も多いようでした。
一人で悩んで手が動かないようであれば、TAまで相談ください。
前に進めるようバックアップ致します。

次回は末光先生のレクチャーです。
今からお話の内容とても楽しみです。
頑張りましょう!!

乾久美子先生レクチャー

6月7日は、乾久美子建築設計事務所乾久美子先生にレクチャーをしていただきました。


以下概要になります。



* * *



延岡駅プロジェクトについて


事務所設立から今までの12年間は、建築を考えるにあたって周辺環境をどう読み取り、どうリアクションするかについて考えてきた。しかし、単なるリアクションでは足りないと考えるようになった。
延岡駅のプロジェクトでは、アクションを与えるようなものを考えた。街を再生させるという、切実な願いを叶えるということ。

延岡駅周辺は、南北の工場に挟まれた市街地は工業を中心に栄えてきたが、脱工業化の流れを受けて幹線道路沿いにショッピングセンターが建てられた。駅周辺の中心市街地は衰退状況で、機能は揃っているが活気がない状態である。

駅そのものを再整備するにはどうすれば良いか。その再整備を通して街全体を再生することが大事である。
駅に商業を付帯させても、大規模ショッピングセンター・インターネットショッピングには勝てない。市民活動を付帯させるべきなのである。公共空間の担い手としてのコミュニティの変遷を見てみると、かつて地域コミュニティ公共的なサービスが都市化になるにあたり弱体化する中、NPOや大学などがつくるテーマコミュニティという新たなものが生まれた。それらに駅周辺を活性化するお手伝いをお願いする。(Studio-L 山崎亮様と協同)

公共交通利用者ゾーンと市民活動ゾーンを並列に並べただけでは人の動線は交わらず駅全体を活性化できないそれらの機能をできる限り分散化して、混ぜることを考えた。両者が触れ合う機会を増やすことで、お互いを知りアピールしあうメリットがある。

地方都市の駅開発でよく有り得る問題は駅に何もかも詰め込みすぎることである。今回は敢えて不足気味に用意することで、周りの空き店舗などの仕様を促す流れをつくろうとしている。駅の再整備は都市再生の「きっかけ」でしかなく、外にどんどん出すことが大事なのである。

市民活動を「可視化」すること。
足りていないのは「機能」でなく、「人のいる風景」である。

そこで、すべての活動を地上階で行うようにする。

1960年代のシンプルなRC造のJR駅舎はパッとしないが、市民からは親しみやすいといわれている。そこで、 JR駅舎を残したままの再整備を試み、大屋根を駅舎から連続するように溶け込ませることを考えた。駅を拡張するように柱が林立し、その中に機能が入っていく。

延岡市の市民活動のシステムとして、ハード面に関しては「駅まち会議」という乾様監修のものがあり、ソフト面に関しては「駅まち市民ワークショップ」というものを山崎亮様がされている。
そこで明らかになったのは、求められているのは単なるがらんどうの空間でなく、においや音が出ることも許容する、必要な機能を持った空間である。透明なガラスで区切ることで、視覚的な連続性を持ちながらそれを実現していく。

ガラスの問題は環境のコントロールが難しいことである。空調化してパッケージ化したものは作りたくない。
そこで、中川純様にお願いし、環境調査をスタートした。冬の偏西風がきついという住民の声があったことから、まずは地形全体を読み込み、気候の特徴を調べた。シミュレーションをしてみると、冬には駅舎に向けて冷たい風が駅に吹き付けることがわかった。それを、常緑樹によってある程度防ぐことができるようにした。また、ガラスで部屋を囲うのでなく、パタパタとガラスの壁を置いていくようにすることで、内部空間でも外部空間でもないような、多様な空間を作ろうとした。


延岡市の市民には、植栽に対する理解があまりない人が多い。周囲に当たり前にあるもので、良いイメージがないからである。
そのため、美観とは違った次元で証明しなければいけない。そこで用いたのがCFDであり、植物をモデリングしてある程度シミュレーションを行い、風の機能的に必要と言うようにした。

駅から市役所まで緑のネットワークも考え、その並木道の効用についてもシミュレーションでリサーチを行った。シミュレーションは地味なレベルかもしれないが、エビデンスづくりは切実に必要であると考えている。

東京大学都市工学科の羽藤英二先生がおっしゃっていたが、公共施設に必要なのは「理論的公共性」ということにすごく共感した。いかに納得できるものになるかが大事と考えている。

延岡駅のようなシンプルな設計は事務所が始まって以来である。
アクションとしての建築といっても、派手なものをつくって劇的に周辺環境を変えたいのではない。
なにかを少し足すことで街を変えること。それは、ささやかであるほど良いと実感している
確実な意味、確実な理由があればいいのである。



○藝大における課題について


芸大2年の住宅課題「自然と生活、そしてリズム」。敷地は根津神社内。エネルギーを使わない住宅を考える課題である。藝大という環境だからこそ、固めの課題を出してみた。

エネルギーとは何か。そもそも、我々はどういう存在なのか。そこでは、寄生について考えることになるだろう。石油などへの寄生でなく、有機的な関係を持てる「良い寄生」について。
どれだけ寄生するかのバランスを考えた人もいた。また、不必要なエネルギーのコントロールなど。
以下は数人の案の紹介。


・北条さんの案
風に寄生することを考えた案。いつも風が流れている場所を見つけ、煙突そのもののような屋根をつくった。
プロトタイプを立ち上げて実証していくことは大事で、プロトタイプの例として良い。周辺環境と融合し、人間のイマジネーションも加わっていることが良かった。


・永野さんの案
大木に寄生することを考えた案。木に寄生するというのは面白い最後の造形が詰め切れなかったが、アイデアが良い。


・都築さんの案
池に寄生することを考えた案。池に突っ込んだ土壁から生えるコケで壁面を常にウエットにする。池に建築を突っ込むという大胆な発想はやや暴力的だが、プリミティブなところからの発想は的を得ている。


・駒崎さんの案
庇からのれんを垂らす。あまりに長いのれんは間仕切りとしても利用できる。これが半外部空間の設計にもちゃんと絡んでいる。
また、人のアクティビティを要しているところが良い。サステナビリティは、このように文化的なものを感じさせるものであってほしい。



○質疑応答


・羽鳥様
延岡駅プロジェクトにおいて、いかにささやかな提案で影響力のあるものを作るか、というふうにおっしゃっていたが、結びつきや関係性が強くなるほど、象徴性は減るのではないか。表現みたいなものがある種邪魔になってくるのではないか。それに対してどう考えられるか。

乾先生:今のところはまだ第1作目である。誰でも作れるようなものを作っているというのはむしろすごく新鮮である。しかし、このモチベーションが続くかはまだわからない。
しかし、今はシンボル性は全く求められておらず、理論的公共性が求められているのは確かである。


・前先生
延岡駅プロジェクトにおいて、なぜポジティブな理由でなく、ネガティブな理由からアプローチされたのか。また、ネガティブを薄めると同時にポジティブに広げていく可能性についてどう考えられるか?

乾先生:市民の方から、風に対する不満が多くあったため、まずはネガティブをつぶすことが大事と考えた。また、今後は中間期や夏期の風のポジティブな利用も考えていきたい

都会の人間は自然に対して甘いように感じる。

乾先生:確かに、都会の人にはロマンティシズムがあるかも。

その違いは感じられるか?

乾先生:意外と、地方の人の方がエアコンをつけたりする。その差をなんとか埋めなければいけないが、その意味で中川純さんの助けが生きている。


・TA 中島くん
空間の質がたくさんあるが、プログラムはどれくらい想定されているか?初期値として、現在の市民活動しかないのか?

乾先生:基本的に求められているものは10年20年でそんなに変わらないと考えている。
キッチン、水回りがほしいなどを当てはめていく程度で、そんなに特殊なことはしていない。


・受講生 吉富くん
のれんを垂らす作品で、アクティビティを促す可能性とおっしゃっていたが、アクティビティはどういうレベル(建具レベル・建築レベルなど)でならできるのか。

乾先生:人を動かすネタはなんだって良い。しかし、ささやかでなければいけない。例えば建築レベルのもので、文化をつくるためのものだと言われても荷が重すぎる。


・受講生 西倉くん
風を考えたとき、直方体の形を変えるということは考えられなかったのか。

乾先生:実際のプロジェクトでデザインを考えるとなると、色々なパラメータがある。
その中で、風からスタートする形は考えられるが、今回は自然環境から形を考えるということを前に打ち出せる状況ではなかった。風は事後的に確認する程度。まずは何より、都市再生を促す機能性が第一であった。


・末光様
自然環境から形を考えることの可能性についてどのように考えられているか?今の段階では、シミュレーションは事後的な確認のみである。乾さんがご自身でいじれれば、変わるのだろうか。

乾先生:エネルギーから建築の形態を考えることに、個人にはリアリティは感じない。日影・風を考えるだけだと建築的な豊かさが圧倒的に足りず、単純で貧しい建築になる。
しかし、情報の束としての建築のなかに、環境的な要素が足りていないのは確かである。
どういうものかはわからないが、気軽に扱えるツールがあれば良い。


・TA 川島さん
藝大の北条さんは歴史的なことまで取り込み、環境をone of themと捉えられていた。しかし、全体的には環境は嫌われているように思うが、なぜなのか。

乾先生:ツールの扱いにくさ。意匠設計者の能力を超えたところにある感じなので、誰でも扱えるものになれば建築の幅が広がっていくと思っている。



* * *



前スタジオ内のレクチャーということで、環境をどう織り交ぜていったかという視点をふまえながら、お話ししてくださいました。
エビデンス作りとしての環境は、建築が周囲にアクションを起こすようなものにしたいという乾先生の軸をさらに強固にしていたように思います。

実務においては、建築を作るにあたって色々な要素がある中で、自然環境から形を考えるということはほとんどないかもしれません。
しかし、乾先生がおっしゃっていたように、建築を形づくる情報の束の中に環境があることは確かで、その可能性を前スタジオで探るということには大きな意味があるのだと再確認できたように思います。



乾先生、お忙しい中大変ありがとうございました。

講師分散エスキス

乾先生のレクチャーの後には、講師分散エスキスの二回目がありました。前先生、中川先生、羽鳥先生、末光先生の4つのエスキス島が作られ、生徒たちは自由に受けたい先生のエスキスを受けました。


●藤間君

非空調とオフィスがからんだことで、何が起こるか。生産性、創造性のある空間を作りたい。その一つの手法としてデスクトップパソコンを開放し、サーバールームを作る。廃熱利用で足湯だったり、ジャングルだったりが、オフィスの中でもできる。

前先生
ビル内の気候区分作りだすという言い方がいいのではないか?温度が高い低い、湿度が高い低いなどをパラメータにする。湿度調整に植生をつかっていくというのはあるかもしれない。低温領域は空調じゃなきゃ作れないが、高温領域は太陽熱を利用すれば良い。とにかくCFDで何を解くのかを決めなければいけない。これをやろうとする時に何が問題になるかを速く把握しないといけない。社員を何時間滞在させることによって貸し出すような料金体系も考えて、時間帯別の利用料金の違いとかの提案までいければ良いのではないか。室外機に着目してもいいかもしれない。クーリングタワーは湿気を与えるものとして、ヒートポンプは冷熱と温熱を分離するものとして考える。室外機にも温熱環境的、空間的な意味付けを与えることで、新たな空調の在り方を示すことができる。

末光先生
熱源がサーバーのジャングルと言われてもピンとこない。日射とか、そもそも自然にできる温度ムラの話からスタートして、微気候をもっと助長させるような操作を加えるとか、初期条件を受け入れてからストーリーを始めるべきである。そのあとで、熱源や壁厚、素材などを操作していくのが良い。プランニング的にはシャフトから一度離れた方がいいのではないか。平面的なスタディが全然足りていない。


●王さん

砂を飲み込む建築。うろこについては断面のへこみが重要なのでそこの形状をCFDで導き出したい。アメーバ―の形は汚染物のシミュレーションでやっていけば良い。球などの基本的な形状と比較したシミュレーションで導いていく。谷の要素もパラメトリックに形状を決めていく。植物もトクサというものがベスト。敷地周辺を手がかりにプランニングや足の数を規定していく。谷の切り欠きがプランニングを規定していく。空間の形状と美術品の置き方の関係をしっかり考えた。中の空間でも山のように隆起する部分が出てきて、屋根に切り欠かれた谷と呼応する。参照する中国の空間として、桃源郷のシーンを参照した。細い暗いトンネルの向こうに四合院のつながりのあるような風景を描きたい。

前先生
勢いがなくなった。アメーバ―が枯れちゃったような造形に見える。敷地の隅々までいくようなパワーが欲しい。でこぼこがあるという操作は良い。プランニングとしては美術館のプログラムらしくしっかり解いて欲しい。方位に関してどういうロジックがあるかを出して欲しい。建築がどの方向を向いているのか、どちら側に広がりがあるのか重要。太陽がどっちから来るのという話がちゃんとできれば最終的には良い。刻み方で方位性が出せないか?

末光先生
プログラムから設計していくという普段の設計の話と、砂をためるという話はどちらが先行しているのか。ギザギザはどのように形を決めていくのか。大中小と3つの刻みのスケールがあるのであれば、3つのスケールそれぞれのスタディをするべきではないか。谷のスタディはなかなか難しい。プラン、動線がシミュレーションだけだと成立しない可能性が高く、まずプランである程度、谷の向きを決めてから、深さを考えた方がいい。ディテールのスタディは、谷の形状として砂のたまりそうか否かで、鱗の凹凸が違うタイプになるとか適用の仕方を考えてみる。模型の質で大きく評価が左右される案。


石綿さん

めくるということが何の意味があるのかをリサーチした。蓋を閉めている部分が蒸散効果を利用できていない。うまく臭気対策をすればめくれると考え、塔のようなボリュームを建てた。

前先生
やっかいものの臭気をなんとか人間のいないところに散らそうというところが良い。ネガティブなものをちゃんと捉えて取り組んでいるのでリアリティがあって良い。煙突は吸排気が強烈に起きるので高さのスタディをしっかりして欲しい。丁度よいポイントでミニマムな操作をしているというところが欲しい。また、汚染物質を拡散させたらどのように都市に拡散していくのかというシミュレーションをして欲しい。塔をたてるのだったらかなりの美的なセンスが必要。今は塔の話を太陽熱だけで語っているが、風も織り込んで欲しい。

末光先生
めくられた場所でランドスケープ的なデザインをすることができる。ストーリーは良いのではないか。環境のための建築に陥って、人がおいてけぼりを食らうようなことのないようにして欲しい。そのためには起伏を使い倒すアクティビティを設計しないといけない。感じ。ミストとか池とか水をもっと積極的に使っていってもよいのではないか。ミストに使うような水にするには、オゾン処理が必要。参照すべき建築はFOAのAuditorium Park、


●松田君

シロアリの塚は地下空間を良くするための棟である。自分の設計では建築にとりついた塚の様なものを作りたい。ビルのリノベーションとなる。品川河川沿いのビル群のファサードゼオライトによりつくられる素材を張り付けていき、ビルのファサードでビルの風圧を操作する。均質なビル表面に対し植生が芽生え、変化をあたえる。

前先生
ファサードエンジニアリング的に、多孔質なものを作りたいという方向なのか。今の建物は光だけ通すけど熱も風も水も通さないようなところがだめ。なんでもメンテナンスが楽だとかいうのになってしまっている話が良くないのは確か。ファサードからどこまで環境要素が送り込めるかという話ができれば良い。今までのオフィスでは雨が入ってきちゃだめだったが、そこが新たな価値観があるとかの転換があると良い。

羽鳥先生
ビルそれぞれに人格があるかのようにゼオライトの着き方がビルごとに異なるような光景がおもしろい。ゼオライトの厚みにより内部に抜ける風や光を操作していくとよい。レイヤーを自分たちで作っていけるようなものレベルにまでなっていくとよい。

末光先生
まず、ゼオライトの現物をとりよせること。ゼオライトが中途半端にくっついているよりビルまるまるやった方が風景としても面白いのではないか。蟻塚インスピレーションの建築は既存例があるが漏れ無く煙突効果を用いている。今回の案では煙突効果の適用の仕方が重要で、例えば毛細管のようにして、風を弱めて取り入れるとかできたらよい。超多孔質でできている超高層のあり方を語る。素材の表層的なあり方ではなく、建築そのものの組成、塊としてのあり方を考えないといけない。

海綿とか自然界から着想を得れば?最小限の部材で最大限の空間を得られる。多孔質で面白くなるプログラムをつくればいい。自分の立てている仮説からどれだけ飛べるかを目指すのが学生の設計課題の意義ではないか。多少破綻している方がよいのかもしれない。


●林君

ヤオトンのリサーチ。環境として優れているのは、風を防げるというところと、温熱環境が良いというところしかない。いちばんよくないのは湿度が高いということ。地下ならではの崩落の制限で、ヤオトンの空間のサイズが決まっていた。洞穴に住むことは北京原人の時からしていた。顔算式、カチン式(有名)の2つのやオトンがある。世帯が増えていくことで穴を広げていく。集団で住むと八合院、十合院などが見られ、それ以上人が増えたらほかの場所へ移るという形式

前先生
地下空間は湿度との戦い。エスキモーが住んでいるイグル―という建物があって、暖かいという話がある。しかし中入ってみたら臭くて仕方がない。中を温めたいという問題と、換気の問題は常に人を苦しめてきた。どん詰まりの空間はそこが問題。人間は対流だけじゃなくて放射でも熱のやりとりをしているから、空気温度が低くても放射が安定してれば良いという言い方もできるかという話をする。形態係数がパラメータになるかも。合理的な穴の開け方が最小限の資源でいけるという話をしなければいけない。コンクリートで全部作る気だったら面白ない。造形的にはもっと地下と地上でが力強くつながなければいけない。

中川先生
ヤオトンの形成過程(砂を防ぐ)を現在の地下ルールに置き換えるとよいのでは?風の通し方、スポット的に明るくさせ方、などから増殖ルールを設定するのが良い。ルール作りのコツは、合理性で作られるということと、アプローチを最短化させるということ。中国文化は古来より自然界が複雑であるということを認識していた。アングロサクソンは全てを記述しようとしたが、中国人は複雑系を複雑なものとして観察する。それを現代のものに読み替えてパラメトリックスタディで検討していく。ヤオトンの現代風解釈については全部かっちり解く必要はなく恣意的でよい。


●小原君

建築のボリュームの配置を再考したい。矩形のボリュームを傾けることである時間での受熱状況を最適化しそれを複数組み合わせることで、日影の設計の最適化を目指す。ボリュームの集まり方により生まれる多様な日射環境に対し、具体的なアクティビティやプランニングの多様性をパースにより提示した。受熱状況のむらを地図などにより、可視化することも考えている。

羽鳥先生
受熱と光だけで人は行動の位置を選ばないのではないか。塔状のボリュームが使いづらそう。発見された形ではなく、想定の範囲内の形に落ち着いてしまう気がする。地面と木と影くらいのシンプルさがほしい。影が出来ている場所の中でも影と日向の境界が人には人気がある。理屈よりもここで働きたい、行きたいと思わせる空間を創れることが大事。
そもそも、塔を複合させてしまうと個々のボリュームでの検討の良さが集合体にしたときに失われてしまうのではないか?美術館というプログラムであれば光環境を制御することで、その作品のテーマにとって最適な光環境を与えることができる。中国では現在美術が流行っているし、環境の操作に向いた作品をつくるアーティストを探してくるのが良いのではないか。また、形態とプログラムの整合性が見いだせていない。北京にする必然性が欲しい。

末光先生
この形で必然性があるのか。環境だけで物事は決まらず、現実的なところも引き受けた方がこの案に関しては良いのでは?例えば、集住で課題になっている要素を引き受けるべきとかそういう話があると良い。造形的には斜めではなく、ただ箱をずらすだけでも同じことができるのではないか?住みたいと思わせるようなものでないといけない。環境的なストーリーはこのままで、造形に関してはもっと可能性を探った方がいい。


●北潟君

工場の分散化はやめ、分棟にして配置する。大動物棟と小動物棟(牛や豚を解体する棟)を残せば他は配置を変えても大丈夫であると考えた。それらの棟を残しつつ敷地に(南北軸におけるプログラムの変化による)周辺の建物高さに呼応した、ボリュームを配置していく。

羽鳥先生
現状として、南北方向の軸における人の移動が起こりづらいとおもう。品川のオフィスがダブルスキンにしたところで、外気の空気質や騒音問題があるとそもそも破綻する。外気を浄化する空間として機能させることに本質的に気がついているはず。周辺の非空調のポテンシャルを上げてやることの方が社会的な提案となりうる。臭気を平面的、高さ的に人にとって影響の少ない場所に逃がすことをして欲しい。
建築を作るロジックのステップとしては、第一段階壁をとる→第二段階臭気をとる→第三段階公共性をもたせる。この第二段階をもっとポジティブにした方がいい。隠された真実から臭いだけ染み出るから嫌われる。その臭いには人間の生活に欠かせない真実が隠れているのだから、もっとそれを主張するくらいでもよい。中国や南米などの道沿いの精肉店は内部につるしてある生肉の印象などと相まって、単純に臭いというマイナスイメージ以上の良さがある。生活の一部として感じさせるべき。


●田中さん

堤防に吹く風が堤防沿いにしか流れないことを示した。堤防上に屋根のようなものをもつ建築を創り、風を堤防の上を超すように計画した。また植物でもそれが出来ないかと考えた。

羽鳥先生
プログラムとか用途を見いだせないと需要がない建築になってしまう。スタディする範囲を制限した方がいい。ビジョンとして何の提案をしたいかを考えた方がいい。広域に対する定量的な改善提案を考える。風を必要としている方向に流せるようにスタディする。堤防に穴を開けて風を住宅街の方まで流してもいい。そこに環境的、エネルギー的な裏付けがあればよい。

●児玉君

無電化冷蔵庫の原理を建築に適用する。既存ボリュームをスラブで貫いてつなげるときのつなぎ方を具体的に考えた。内部の使われ方も一部平面図描き表し、具体的に示した。

羽鳥先生
今は配置から適当にスラブをつないでいるが、既存のプランの使われ方を表す平面図を描き、新旧の対比を分かりやすく見せると良い。どこが特に暑いのかとか現状把握が大事。水を建築に通すことが防災上やネオンなどの照明を利用する際にも生きてくる話などがあると良い。もともとの状態が劣悪になっていることを表すサーモなど、現状を変えなければいかない裏付けが欲しい。

末光先生
放射冷房の機構に依存しすぎて、提案が何かみえてこない。無電化冷蔵庫万歳みたいな案にしかならないのではないか。既存のリノベーションということに拘るのはなぜか。新築の方がいいのではないか。空間としての提案がほしい。冷えることで大きなメリットがあるプログラムはないのか。

中川先生
この案はなるべくささやかな操作にした方がいいのでは。また、曲線を作るときは明快なルールを設定すべき。周りの躯体にあまり影響を与えないようなルール。


●清野君

敷地として選定した場所は、品川駅から河川に抜ける道の先にあり、河に抜ける視線を妨げているビルが建つ場所。駅から河まで、視線が貫くように建築を二分する。複数のスキンにより構成されるファサードを、貫いている道の両脇に設ける。プランによりスキンの幅を変える。

羽鳥先生
スキンがもっと建築に勝っていてもいいのではないか。河が見えているだけでは人は集まらない。人がそこで何かしらのアクティビティを起こしているのが見えることが大事。スキンの設け方により境界があいまいになり、いい空間が生まれることをなんとなくのイメージではなく、模型で早くスタディする。
レイヤーによるプランニングの変化を考えるとき機能で与えていくのではなく、一度かっこいいというインスピレーションだけで考えた方がいいのでは。論理を一度離れた方がいい。レイヤーを構成するパネルの重なり方において視覚的な見え方に関するスタディも必要。

末光先生
5mのスキンのゾーンは何に使うのか。動線だとしてもコアとの関係はどのようになるのか。プログラム論をするとスキンを語るうえで、話がそれているのではないか。スキン論とすると、スキンの性質を書き出して、どのようにそれぞれの機能を担保させるか考えていくと手が動くのではないか。防水、断熱など。参照すべき建築としては、アルミの家(伊東事務所)やHouse N(藤本壮介)で1つの素材でギャップをつくるのが面白い。開口率としては全体では一般的な家と同じにように設定する。


●米澤君

環境的なものから考えると、半径120〜240mがベストだと考えている。北京が敷地にある。原発問題のためのシェルターだと考えている。空調はいらないシステムを目指している。表面の不透明な部分は太陽光パネルをはる?直径500mで100人自活できる★ができる。ノアの方舟。ただし、肉が難しい。日射のあたるところは水耕栽培。外周部にマグロを放つなどはどうか。

羽鳥先生
100人しか住まないのはダメ。地域社会圏主義では、100m×100m×40m?で1500人の規模を考えるのが良いのではないか。1万人くらい住めないといけないのではないか。バブル期のゼネコンの超高層の提案がいっぱいなされたときのものを参照するとよい。設備的なものをもっと考えないといけない。住居をどのようにつくるか、働く場所、寝る場所。外皮部分は植物と人間が共存する形式になるのではないか。

中川先生
永久に循環する水システムがあるのがよい。対流を起こすためには、下部の水に日射を当て暖める。その際、外部に反射板を設置するのか。住めない場所があってもいいという割り切りがあっても面白い。メロンの網の目状のダブルスキンにして空気を上に流す。20万個中国に置かれるような絵を描いた方が良い。直線状に置けば万里の長城のようになる。
500mの球という、ナンセンスなことを徹底的にやっていきなさい。ナンセンスではないことをしていると原発が出来上がる。万里の長城の後ろにうっすらと映る500m球。あ、何この世界??みたいな。


●吉富君

1戸ごとの家が庇をだす。塔によって、断面的な街路との開き方の類型、プログラムによって異なるカタチ、パタンランゲージを目指す。

末光先生
プログラムだけだと差異を拾いきれず、パタンランゲージにならないのではないか。プログラムのみがカタチに影響されるものではない。庇の重ね合わせによって濃淡はつけられそう。光と熱の扱いでお話はできる。松原商店街。横浜のアメ横。よくみるといろんな庇がある。環境的な要素で、何種類もパタンランゲージとして導き出せるのかは分からない。単純な環境的要素ではなく、購買意欲をいかにあげるかとか、商店街本来の要求される要素を拾い上げないといけない。環境という輪郭がぼやけたものを、他の要素を参画させることで、具体的なものにしないといけない。

中川先生
町を活性化させようとしたときに、木を植えるだけで人が集まる。表参道も大きな木が生えてあるから人が集まる。吉冨くんの案は、?既存が開放系になっていく?裏の隙間で操作?屋根の操作。これらの操作が複合的に行われていくことによって、非空調を成立させていくプロセスをたどる。これは非常に緻密な案ですよ。薄味でしっかりと味を持っているような作品。


●富山君

四合院の形式を現代に読み替える。隙間には構造、動線、設備を満たす空間を入れていく。

中川先生
画一的な2m幅のラーメンが四合院らしくない。ラーメン柱の幅がもっと多様な方がよい。四合院とは4世帯が集まって始めて四合院となる。だから、複数のまとまりを単位としたルールで設計を進めるべき。そのまとまりを隣接させる際に最適な関係性をもたせて増殖させていく。ラーメンのような見えるフレームではなく、環境という見えないフレームで形を作っていくように。環境的なルールがこの見えないグリッドを形成している。それが無意識の操作をしていて、それがフラットな社会を目指す。すなわち、フラットな行動を促すような社会をめざす。そのグリッドにボリュームをはめたものが完成形となる。フラットな場所に行ってみて、何がフラットにしているのかルールをみつける。


●西倉君

棒状のルーバーの間隙とスティック幅を変えた時にどのように風の流れが変わるかスタディを考えている。構造を考えて作っていく予定。鉄、RC、木でグリッド状に躯体構造を組み合わせていく。それぞれ放発伝熱、蓄熱、断熱として機能させる。構造はグリッド、設備は斜材。

中川先生
ランダムに配置すると面白いものが出てこない。全体で解かないとだめ。ある形を作って、それを微調整していくことが必要。素材もパラメータとしている。ボリュームの解像度を上げて(細かく)みていく。作りたいざっくりしたイメージがあってそれに仮の温度ムラを与える。そのムラをどんどん細かくしていくと、作りたいイメージに近づいていくのでは。空間の生成原理と温熱環境の生成原理が一致している必要がある。葉っぱがあって、葉脈だけが残るようなストーリーにしていけばいいのではないか。

全体的に、案のディベロップのスピードが遅くなってきたような印象を受けました。ただ、皆の案の最終形がだんだん見えてきた気もします。
川島は同じ日に石川スタジオのエスキスにも参加したのですが、彼らの方が断然進んだアウトプットを出していました。前スタジオも最終堤出に向けてエンジンをかけていきましょう!

TA分散エスキス

今回のTA分散エスキスでは富永さんの紹介で明治大学大学院建築学科の中川沙織さんが参加してくれました。

今回はデジタル系(川島、浜田)、シミュレーション系(高瀬、茅野)、意匠系(中島、富永)、ぶっとび系(中川あや、中川沙織)に分かれてエスキスを行っていきました。
ちなみに筆者も、半分はネーミングの意味がわかりません。


では本日行われたエスキスの内容についてまとめていきたいと思います。

児玉君
選定した敷地に現存するプログラムを踏襲し、新たに緩やかにスラブでつながれた空間をつくりそのプログラムを再配置していく。その空間は無電化冷蔵庫の原理で冷やされ周辺よりも涼しい横町のような場所になる。解析では内部発熱を水に吸熱させ、水の対流をおこし、熱を屋根付近に移動させることで、屋根パネルからの放射により宇宙に放熱することを示そうとしたができなかった。




設計の案としてはかなりよくなった。北千住の夜を愛せという前回のエスキスが効果覿面であった。その敷地だけではなく敷地脇の道に対しても快適な環境が提供できれば、道の両脇の居酒屋の椅子やテーブルが店の外にまではみ出してきて新しい顔の道ができるのではないか。シミュレーションに関しては、内部発熱が水にうまく伝わっていないのと、水の熱容量が大きすぎているため、またおそらくメッシュが荒すぎたため水の対流が起きなかったとおもわれるので、4層分をまたぐ冷却水の対流を考えるのではなく最下層の水の部分で対流がおきるかメッシュを細かく切り検証してみること。


王さん
黄砂を吸い込むモデル形状に対し、風を流すシミュレーションだけではなく、汚染物質を流すシミュレーションを行った。
シミュレーション結果として南側の入り口を開けておくと室内に汚染物質が吹き込み蓄積するという結果になっていた。解析領域の設定が誤っており東西の黄砂のたまり方がうまく再現できていなかった。北側の斜面にはHPシェルにより構成されるうろこのような外皮を提案し、シミュレーションをしようとしたがモデリングができなかった。



南側入り口を閉鎖し、解析領域もモデルに対して十分大きくとり解析すると、汚染物質が北側のくぼみにたまり込む一方、風は南から北へと抜ける浄化作用がちゃんと示せた。
北側の斜面に対してはHOシェルのより構成される屋根全体をモデリングするのではなく、HPシェル1ユニットだけモデリングし解析にかけるようにした方が良い。コンクリのなだらかな屋根の上にうろこがささっているような屋根で妥協するのはまだ早い。HPシェルだけで構築される屋根の可能性をシミュレーションしてみること。


田中さん
堤防付近の敷地を建物抜きでモデリングし、そこに流れる風をシミュレーションしたが、顕著な特徴は現れず、結果の見方がわからない状態だった。
プログラムとしては中間までは堤防そのものの建築化であったが、今は堤防自体には手を加えず、堤防付近の開発という方針に切り替えている。



シミュレーションにかける以前に、スタディ模型を作り、堤防付近のボリュームによる風の操作を考える。まずは手を動かす。
風の解析をするときは風向を表すベクトルのひとつの動きを追い風が堤防沿いに流れるのか、堤防を越えて吹くのかをスタディする。現状ではまだ一方向からしか流していないので、全方向から流し、堤防がその敷地に対してどの程度影響を与えているのかを定性的に把握する。シミュレーションと並行してプログラムや建築の役割について具体的に考える。



藤間君
前回のエスキスを受け、無意識を意識的に解くためにノマドにとって必要と思われる行為に対し最適な温度、湿度およびその行為の継続時間を自分なりに分類した。意識的につくる温度むらに対しこれらの行為をあてはめていく。建築の鉛直方向にも大きな温度むらをつくり煙突効果により周辺敷地の排熱を回収することも考えている。


スラブに通しているシャフトの径が20cmなのに対し、メッシュが大きすぎる。細かいメッシュを切るにはビル全体のモデルではメッシュ数が大きくなりすぎるので、シャフト1本レベルでどの程度シャフトから発生する熱が広がるかを見た方が良い。排熱を回収数という話に対しては、ビルの排熱の場合室外機の位置的に排熱が主に屋上から発生するため、その熱を吸い込み排出するためには、相当な超高層を考えなくてはならない。


米澤君
Flow designerのシミュレーションをもとに、球の大きさをスタディ。大きすぎると空気の流れが十分におこらず、温度ムラができない。半径250mが現状ではよさそう。非常時のシェルターとして考えている。非常時は閉じた系として機能し、通常時は開いた系として機能する。


ストーリーが定まっておらず、特に通常時、日常での使い方が提案できていない。ただ、ストーリーのみで構築すると、今まであったノアの方舟的な案に陥ってしまう。環境要素からのボトムアップで全体像が問われないくらいのものをつくる方向性もあるのかもしれない。フラーに対する自分なりの解釈は必要である。

石綿さん
負圧を生み出す塔状のヴォリュームを下水処理場の敷地に建てて、臭気が拡散しないようにするという案と、下水処理場の機能と対応させたパッチワークのようにテクスチャを構成するという2案を考えている。



提案された2案は両立するので、テクスチャをまずやって、そのテクスチャの延長として塔が建つようなものができてもいいのではないか。そのために塔の形のシミュレーションスタディ、敷地の日影図(GLだけでなく、+3000ごととかの)が必要。その素地を整えたうえで、非空調空間という課題にこたえるかを考えていけばよい。

建築の空間はどうなるのか。塔にまとわりつくのか、大きな屋根がかかるのか、地面の人工地盤に起伏をつけたりしながら変化をもたせるのか。プログラムは現在計画中のオフィスとすれば自然かもしれないが、塔が構造体以上のものになりうるか。
○木曜までの課題
・敷地の風・日射シミュレーション
・塔の配置のスタディ
・プログラムはどうするか


吉富君
敷地の読み込み、既存の図面をおこして、スタディしようとしている。シミュレーションは現状なかなかうまくいっていない。緑のひさしと塔の具体的な形を考え中。

敷地模型をすぐにつくり、断面を5枚くらい書いて、生活の様子や、提案の具体的なカタチを構想するとよいのではないか。シミュレーションは適宜TAに聞いてくれればと思う。

紺野さん
成城において、駅ビルのプログラムを分析し、1つ1つのプログラムの非空調空間化できる部分を抽出し、GL付近の道なりの風と、上階の高さおける卓越風を手掛かりに空調空間のヴォリュームの配置を変えることで、非空調空間に風がいきわたるようにしつつ、居場所をつくる。さらに周囲にも展開することで、駅ビルだけで完結しない周辺地域にもよいものを目指す。

居場所というときに、具体的な対象、時間帯、季節などのシーンを考えればいいのではないか。駅ビルという不特定多数の人がいるプログラムであるからこそ、いろんな場所をつくる意義がある。雨水の通り道のようなものをつくってあげてもいい。ヴォリューム配置のスタディだけではなく、スラブに起伏やレベル差があったりして、建築としてどこを変えればよいか、変えうるかを考えた方がよい。

松田君
基本的には今までの案を引き継ぐ。ガラス張りの超高層へのアンチテーゼとして、シロアリの塚の転用。どうやって建築に落とし込むかというところで素材について調べてみると、石灰華やビオライトなどがあった。新築でなく、リノベーションでも良いのではないかと思っている。


リノベーションの方が色々なケーススタディもでき、リアリティを持たせやすいかも。必ずしも全てを覆う必要はなく、ビルの1部分だけとかもあっても良いのでは。パトリックプランのようなもの。方法論的な提案になるのではないか。運河沿いなどにすると良いパースが描けそう。
○木曜までの課題
・ストーリー・ビジョンの組み立て
・壁における操作のスタディ
・(コンセプト)模型
・現状の品川においての風・日射シミュレーション

清野君
基本的には今までの案を引き継ぐ。内外部を過度に仕切っているペリメータゾーンへのアンチテーゼとして、運河と建築の内部空間の間の浸透膜のようなものを考える。スキンの素材を何にするのか考えている。同じ素材1枚を重ねていくのか、違った素材を組み合わせるか。前者の方がシンプル?外形のイメージがない。


スキンを重ねることで違う空間を利用できると良い。敷地の選び方は良く、駅から川への眺めから外形を考えてみては。その際、駅から川まで外部にしておくことはなく、膜をうまく利用する。こわす・なくすだけが否定の仕方でないので、違ったアンチテーゼを。
○木曜までの課題
・外形スタディ
・膜の種類・効果の詳細な検討
・敷地模型

林君
基本的には今までの案を引き継ぐ。地下鉄と外部を結ぶものとして、ヤオトンのようなものを展開させていく。ヤオトンの歴史を調べていくと、今までの進化がわかった。環境的な長所・短所も論文からわかってきた。これらを参考にして、もっと環境という視点をつなげながら地下鉄の空間を展開させていく。

色々なヒントがわかってきたが、全体のイメージがつかめない。ざっとこんな感じという配置図やゾーニングを書いてみて、敷地に当てはめていこうとするとイメージが湧きやすいのではないか。また、変数をどこにするか当たりをつけどんどんスタディしていってほしい。
○木曜までの課題
・建築の配置図のイメージ・大まかなゾーニング
動線スタディ
・ヤオトンに環境を組み込んだデザインのスタディ

小原君
敷地は北京。太陽のエネルギーを建築の壁面と外部空間にどう分配するかを再考したい。太陽光線を全面に受けとめるボリューム「屋外充実型」となるべく避けるボリューム「室内充実型」を考案した。現状は屋外充実型のボリュームには動線、室内充実型のボリュームにはプログラムが入ることを想定していて、それらが組み合わさることにより日射の分配が考え抜かれたビルが出来上がる。


細長いボリューム組合せ方の造形スタディとしては良くなってきたが、もっとロジックが欲しい。そこではビル全体を機能させる点と日射の分配が意図した通りになるという点が重要になってくる。またボリュームの内部の使われ方のスタディが足りないので、そこのバリエーションを出し、新たな生活像を作ることができれば良い。クロードバラットの「斜めに伸びる都市」は、居住と動線の分離へのアンチ的な内容だから、参考になるかもしれない。しかし、全体的に机上の空論でしか案が構成されておらず、敷地や温熱環境などのリサーチも反映されていないため、実際の社会に対する提案性が低いので、なぜこの建築を作らなければいけないのかという理由を考え抜いて欲しい。

四次元的。全ての日時について最適化はできない。話が複雑。これだけ時間を考えているから、それに伴うアクティビティもしっかり考えたい。とにかく、大事に考えているスタディをしてみて、それらを組み立てるというイメージ。
○木曜までの課題
・コンセプトをA3 1枚で
・部分のスタディをもっと膨らませる
動線スタディ
・一人一人のアクティビティを語る

富山君
北京における中規模ビルの建物の在り方を再考する。古来より四合院の中庭の環境を中心に幅広い所得層や背景の人々を受け入れる器として働いていた。その四合院の形式を8層程度のビルで立体的に展開することにより、ビルの外部にムラのある外部環境を作り出す。それによって現代の北京においても様々な所得層の人が集えるような場所ができるのではないか?

四合院の歴史や形式をしっかり調べてそこからボトムアップした思想と空間造形を提案できているのは良いが、肝心の非空調域の設計まで至っていないのが欠点。また、現状の模型では構造体を殆ど表現していないため、今後構造体や、ビルのファサードができてきた時に一気につまらない案にならないか心配である。環境と意匠両方の面で早急なスタディが求められる。環境的なシミュレーションで徹底的に検証することによって、ビルのファサードや構造体まで規定していく方向性が突破口か。

北潟君
敷地は品川の街全体だが、集中設計敷地は食肉工場。食肉工場の建物を分解し街に再分配するという案は、街に与える影響や食肉工場の機能性を鑑みてボツになった。現食肉工場の核となる部分は残しながら、塀を取りはらい周りから動線を挿入することによって、食肉工場を品川の新たな交通のハブとして機能させる。食肉工場へとつながる動線は、同時に街の環境を微妙に操作する装置としても働き、街の各部の環境的なポテンシャルを生かし、問題を解決しながら、品川という都市の分断を解消する。



計画・環境の両面において品川の街におけるミクロなリサーチを丹念に積み重ね、参考となる文献を活用しながら案を作ろうという姿勢が良い。しかし建築として形にできていないので、早急なスタディが求められる。また、自分が街の中に動線を挿入することによって何が起こるかについての環境的なイメージが皆無なので説得力を持ったストーリー作りが求められる。

分散させたいとのことだが、機能的に無理があるのではないか。食肉市場の中を見学してみて現実のものをしっかり見てみる。オープンスペースを作りたいというだけでなく、どうつなぐかのネットワークまで考えられると良い。食肉工場の場所性に注目しているが、食肉工場自体と人との関わりは?
○木曜までの課題
・意志を固めてくる
・既存の状態と壁を省いた状態の風のシミュレーション
・既存の状態の模型
・周囲の状況、そこをどうしたいのかを細かく書き込む




次回は乾先生によるレクチャーとエスキスが待っています。
外部の方でもお気軽にレクチャーにお越しください。

華僑を迎えてきましたが、引き続き頑張っていきましょう!

講師分散エスキス

中間後初めて、講師の方々が本格的なエスキスをしてくださいました。
羽鳥様、中川様、前先生と、都市工の石川研の高取さんがきてくださいました。

まず、エスキスの前に高瀬さんの作ってくださった手作り風洞実験器のお披露目がありました!
受講生は積極的に利用しましょう!



さて、各受講生のエスキスの詳細です。

藤間
データセンターのサーバーの排熱を利用して、ノマドワーカーのためのオフィスを考える。


講師陣のエスキス
データセンターの話と、ノマドワーカーの話とで話が分かれている。
データセンターは一極集中、ノマドは極端な分散という、空間としてはまったく異なるもの。
この対比をどのように設計に生かすのか。

データサーバーというプログラムに目をつけたのは面白い。
既存のデータセンター、オフィスについてリサーチはしたのか。
問題意識を持つ対象に対する解像度が低く、提案の域に達していない。排熱の空調負荷を減らすことが目的化している。
もっと新しい働き方を提示できなければ意味がない。ノマドという言葉を単なる客寄せパンダ的にしか使えていない。
敷地についてのリサーチはしたのか。敷地においてスタディした方が考えるべきことが見えてくるのではないか。
チューブ、配管の配置にロジックはあるのか。夏と冬で要求される性能は変わってくるはずで、また、方位によっても変わってくるはず。



兒玉
無電化冷蔵庫の原理を利用して、夜間放射によって冷却し、ヒートアイランドを緩和する。

講師陣のエスキス
実現するためのオーダー計算が必要。
丸である意味は?スケール感が現状では欠如している。
1つは詳細図面がかけるとよい。

そもそも、ヒートアイランドを解決するという話より、その建築を使う人がどのような豊かさを享受できるか語れないと共感できない。
放射のためだけに平面の形が丸になるのはいかがなものか。そこで中で働く人にとってメリットは何か。
断面的な熱循環をもっと緻密に考えるべきなのではないか。

放射冷却は夜やるのだから、夜の街に対してどのような効果を生み出せるのかを考えた方が良い。
屋根面にはパネルを付加するとして、内部のデザインになると思う。設計箇所により空気が冷やされるということは、夏でも風に当たることが出来るため、窓を開けるひとが増える。
そこに人の新しいつながりが生まれる。まずは、北千住の夜を愛する!


富山
北京において、貧富の差を考え、階級を問わずに入れる建築を目指す。
四合院の構成原理、環境的安定性に着目。3次元的にその構成原理を展開する。

講師陣のエスキス
階級を超えたコミュニティとはありうるのか。
スケール感をもって、スタディすべき。
インフラとのかかわりはどのようになっているのか。

貧富の差を埋めるという話より、別の価値観の指標を示すべきではないのか。
高級マンションに対して、四合院でしか得られない価値を分析から導き出すべき。
コミュニティの原則は排除であり、マンションと四合院のようなものとが対になって提案されるとかはありうる。

壁面が連続面よりも、庇の集合の方がいいのではないか。空調を創らなくても次世代的な快適性は作れるというマニフェスト、そのヒントは四合院にあったことを強調する。
その原理を3次元的に生かした新しい形態をつくる。



北潟
品川において、周辺の関係性を分断していて、臭気が問題になっており、高い塀のある食肉工場の一部を分解し、周辺に散在させ、人間のため、家畜のための緑地を併せてつくり、関係性を回復させる。緑地で散歩する牛の肉はうまくなる。

講師陣のエスキス
臭気をシミュレーションするのは今までにないので面白い。

主にTwitterより
「都市の断絶」など対象が生み出している問題抽出に客観性が低く、食肉工場を分散配置するという手法も、ドラスティックなわりに臭気など物理的な問題を解決できているのか、そもそも食肉工場として機能するのか不明瞭で、全体として良くなっているのかどうなの良くかわからない。
臭気や騒音、家畜が見えることなどを強引に解決している壁がどのように問題なのか共有されない限り、この提案の価値がまず見えてこない。これは情報収集、編集、プレゼンの問題でもある。
それが社会的に認知されている問題から個人的に感知した問題まで幅広く掬い上げられていれば尚良い。
品川は下水処理場もあり臭気問題が深刻な街でもある。臭気の濃度により自然通風などできないビルもある。問題解決型提案は自分が着目した問題の掘り下げを短期間に徹底して行うべき。
同時に解決手法の仮説を複数立て、さらにリサーチしさらに仮説を改良するという手順が要る。
一方で問題解決屋さんでは建築をデザインしているというには不十分で、例えば臭気を都市構造と気流の関係を少々コントロールすることで、影響の少ないルートで排気拡散させ、周辺建物に非空調可能な状況をつくり、その延長線上の都市空間、ライフスタイルを描くなら意味があると思う。

エスキスの段階で、問題意識を共有させるためのヴィジュアルが決定的に不足していた。工場にとってのメリットが言えないと、(せいぜい工場として成立することをプレゼンできないと)そのあとの都市に対する影響を語っても共感されにくいだろう。

港区で高層ビルが作る風環境のシミュレーションをしていて、湾岸にある100mスケールのビルが後ろに1kmぐらいの弱風域を作る。また、100mと50mぐらいの高さ間で上下方向に渦ができることが最近わかってきている。これをロール構造と呼ぶんだけど、特異な上昇気流、下降気流が発生するため、地上のレベルの熱と上空レベルの特異な熱のやりとりが発生する。普通はこの循環は50m以上の高さでしか起こらないが、7,8層の高さのビルに囲まれた25m角ぐらいのスケールの開けた広場があれば、そこまで上空の冷気は下りてくる。

汚染物質のシミュレーション。汚染源を分散配置し、その影響が被ることがない範囲にボリューム配置をする。




北京において、ヤオトンの考察から地下鉄の駅を考える。地下空間を主に考え、自動車や地下鉄など、交通の結節点としてのありかたも考える。

講師陣のエスキス
ヤオトンはセキュリティの問題もあり、環境的な要素だけでは解けない。
普通の駅で体験できるような普通のボキャブラリーを使ってはダメ。
ラディカルな駅のあり方を考えてほしい。

発想の原点となっているヤオトンの解析が重要。これでいいとおもった瞬間の形態がその地域で広がる(「建築家なしの建築」ルドルフスキー)。
ヤオトンがなぜその形態で波及しえたのかをもっと分析する。
なぜインコグニート(土着の先人的な建築家)地下を掘ったのか、この地域にとってなぜ掘る方が良かったのかをちゃんと分析してやる。そのルールを解析してやる。
そのルールに基づいて掘方を考えていくと歴史と環境が結びつく。
計画的な最短ルート、ヤオトンの掘方のルール(歴史×工学)により基本的なスタディーを行い、最後には自分のイメージした地下を加えてやる。
大矢石砕石所の空間が参考になるかも。



田中
北千住の荒川の河川敷の環境を、堤防を操作することによって、住宅地に取り込む。

講師陣のエスキス
風を流すためだけに堤防を変えるのは現実的ではない。すでにこの堤防の形はいろんな要素を踏まえたうえで、この形に決まっている。
それを1つの要素だけで変えるのはいかがなものか。



清野
品川の運河沿いの敷地で、外部・超空調・空調の序列を組み替える。外部・非空調・空調 三層のスキンを考える。一番外側は親水性をもたせるスキンなど。

講師陣のエスキス
GLでの平面や断面を詳しく考えるべき。

巨大再開発計画みたいなスケールで計画するより、モデルケースとして、1棟を扱って設計した方がよいのではないか。
運河の水質はどうなのか。東京の都市河川は概して臭気の問題があり、そのまま利用できるのか。
それを裏返せば、都市河川の水質を良くするようなインフラも踏まえた提案になるのではないか。
中の環境がどのように良くなって、人の働き方がどう豊かになるかをスタディするべき。

人口膜の発想。そうして境界をあいまいにするのかのストーりーは持っていた方が良い。
現状(運河沿いの断絶)と案(建築と運河が浸透膜を用いることで運河の意味や運河沿いの風景が変わる)ことのパースを描く。
断絶したもの(川)に対して、建築が断絶したものになっている。かつて境界として設けられた河川の残骸に対して、建築もそこを境界としている。
→浸透膜により運河と建築を通す。土木と建築の浸透膜としても機能させる。



米澤
球の外皮に上昇気流が発生するような日射の当たり方を意識して切れ込みをいれる。

講師陣のエスキス
地面に接している部分が敷地。中国は今後エネルギー消費の増大に伴い原発が増える。土に埋葬された放射線物質に対するシェルターと機能させる。
2kmの球の中で何人が住めるか、どんな植生が必要なのか。
北京には何個の球が必要か。中国をはみ出て海に出ても面白い。羽山さんの案を参考に。自給の計算。全体は1万分の1のスケール、部分部分で1000分の1のスケール。



小原
日射を得る、避けるボリュームの傾斜角と方位角を季節と時間帯に分けて分類。
そのボリュームが屋内に対して充実したものなのか、室内に対して充実しているものなのかを発見した。
これらを組み合わせて、空間内において光、温熱環境をコントロールされた場所をつくる。

講師陣のエスキス
森山邸ができたことで周辺環境がすごくよくなった。周辺との関係が生まれた。森山邸の良さを分析する。どこで酒を飲んでいるのか。
気持ちい場所と時間を整理する。森山邸はアクティビティーまで意識してつくられた、今回の設計案は意識されてないからそこに様々なアクティビティーが生まれる。
スケールに関してはいろいろなものがある。
設計者は意図的に気持ち良い空間を設計する。利用者は無意識でそれに気づきそこでアクティビティーを起こす。環境デザインは意識的な無意識のデザイン。
人間のアクティビティ、空気感をパースに落とし込む。

太陽のもとで美しく見えるものは?ある一瞬がすごく美しく、劇的。
古代遺跡のメタファー。太陽に対してどういう風に建築は建ってきたのか
色々な美術品を見てみるべき。屋外のものと屋内のものの間を狙う。



吉冨
商店街のファサードに蔦植物を様々な形で配し、その冷熱で夏場冷やす。

講師陣のエスキス
既存を生かしながらいかに非空調空間をつくれるか。既存のビルの高さがまばらであるということはウィンドキャッチャーになっている。既存のビルの高さごとに屋根形状を考え、商店街に落とし込む形態をスタディーする。
屋根形状を風による街づくりのルールを決めてやるといい。敷地境界線に対し少しの操作でどうよくなるか。境界線に行う操作は街としての財産になる。境界を計画学的に共有するだけでなく、エネルギー的にも共有する。
まずは屋根形状のスタディーを。建物の隙間に設けるボイドの大きさはシミュレーションにより煙突効果が生まれるように設けていく。

垂直動線も類型化する必要がある。ミニマムな改編で効果がないと、商店街を扱うのであれば説得力がないと個人的には思う。商店街の緑の架構を具体的に考えないといけない。架構をどれくらい飛ばし、水はどれくらいやる必要がありなど。



石綿
都市のなかでのインフラの共存の方法を考えたい。めくった部分が常に負圧になるようなデザインを考えている。大きな水循環のシステムを敷地にあてはめてみようとも思った。酸素を送り込み続けてバクテリアを活性化していた現状を補助するような建築を考えれば面白いのではないか。

講師陣のエスキス
冷却する水が大量にあるのに生かし切れていなかったことに注目する水と地表面で熱交換をする列柱みたいのがあるといい。
超クールスポットを創りそこに風を吹かせ都市に冷熱を供給する。今まで臭気を届けていたものが都市に冷気を送る装置になる。
周辺に冷気を送るとともに、敷地内にはミクロは快適な居場所が出来る。そしてそこがライブスペースや超クールスポットなどになり使われる。

機能的なサーフェスと下の機構が詩的なつながりではないつながりがいえればいい。
周囲にも良い影響があたえられるようなものではないといけない。
現状では臭気の問題で、周囲のビルは自然換気できない。都市の緑地論まで語れないといけない。
サーフェスのあり方から、建物まで構築できればストーリーができる。



紺野
空調を分散配置し、壁を取り払うことで外に開けた非空調域をつくる。

講師陣のエスキス
今回の課題の趣旨をよくとらえた案。空調域の壁を取り払い、非空調域を増やすことが、建築としても外に開いていく。内に開くのは非空調域のふりをした空調域。
建物内部に木漏れ日のようなむらをつくり、風を通す。プログラムはそのむらに合わせて、与えてやればよい。プログラムごとの滞在時間、利用時間帯、最適な温度むらなどにより分類することでプログラムを加えていけばよい。
無意識を意識的にデザインし、無意識に利用者に感じさせることが大事。




黄砂が建築に吸着し、そこに植生が芽生え、やがて地面と一体化する。敷地周辺にアメーバのように溶け込んでいく建築。

講師陣のエスキス
メーバというなら細胞分裂は欠かせない。スタディーの経過として建築が細胞分裂を繰り返し都心の中に点在していくようなストーリーを作ってやると面白い。
細胞分裂のう法則は偶然のようで物理的な必然が含まれている。
細胞分裂の場合は重力に従って縦に必ず分裂するなど。建築の形の変化や砂を集める溝などのスタディーに物理的必然を加えてやる。
そのためにはシミュレーションを繰り返す必要がある。本当のアメーバのように、突然変異から生まれた形が環境的要因により淘汰され、また突然変異を起こし、また淘汰されやがて緑に覆われ、分裂するというようなストーリーにしてはどうか。
時間とともに成長していく建築という意味で、建築ができたときが一番良い状態ではないところが面白い。
中間講評で「砂を吸い込む」という表現がおそらく強く印象づいている、「砂を吸い込む」そのことで「土をため、そこに植生を芽生えさせ、やがて地面とつながる。
建築内部に点在していた植生のスポットがやがて敷地全体に広がり、分裂うを起こすことで最終的に都市の内部に点在していく。」というストーリーに言い換える必要がある。

今の模型は方向性がない。スタディを段階を踏んでやっていくべき。
シーンを考えること。四合院の屋根の高さを揃え、景色に取り込むなど。
美術館の仕組みも考えること。中が美術館である必然性は?形を生かすためにはどうするべきか。


松田
しろありの塚の形態で超高層をつくる。

講師陣のエスキス
複雑系の科学(カオス)によりシロアリの行動が決まっている。シロアリ一匹一匹は明確なルールを持たずに動いている、それが集合すると全体としてルールが生まれる。
創発」がキーワード。
単純な要素によい構成されるボリュームが共通であり、敷地に特有な環境要素(日射、風)によりサイトスペシフィックなものを創っていく。
作り方の提案。まずは作り方のルールを決めるためのシミュレーション。


総括
全体的にスケール感を伴わないものが多く、図式的なもので思考が停止しているものが多い印象です。
出題の際に、敷地の選び方がスケールに基づいて4か所選ばれていたことを振り返れば、今回の課題において、提案にスケールが直接的に関係するという意図がわかるはず。。
おそらく、敷地から距離をとって、新しい建築の形式を考える人もいると思いますが、自分で手が止まっていると感じる人は敷地にあてはめてみて、スタディした方がよいのではないでしょうか。
まあどの案も敷地にあてはめずに現実との接点を持たないわけにはいかないわけですが。要は手順の問題ですかね。一方向的な思考ではなく、違う側面からも見てスタディすれば案として強度を持つはずです。

なかなか手厳しいことを言われている人もいますが、可能性のある案ばかりだと思うので、引き続きがんばってください!